【レビュー】『聲の形 5巻』大今 良時

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読むのしんどいので(苦笑)レビューすんの遅らせてたら、前巻レビューしないうちに次巻出ておりましたよと(泣)。

『聲の形(5) (講談社コミックス)』




あらすじめんどいので略。加えて読むのしんどいので作中ディティールの認識齟齬あった場合はご勘弁。ちゅうかけっこう自分のきらいな葛藤を楽しむ系のラブコメ的なウザさと似たような部分もあるので、正直しんどいでござる。

すぱーん!と本題やってくれい!?てな感じ・・・と思ってたら、あら?
ひょっとして、すぱーん!とやっちゃいました・・・?的な巻。


基本前巻のレビューと同じであるが、ここまで心の鎧をなんとか下げたまま頑張ってきた石田が、更に弱い存在である連中の一人の、自分勝手な自己防御の攻撃の前についに耐えきれず反撃してしまう。
結果、これまでなんとなく「仲間」「友だち」としてふるまってきたメンバーは瓦解し、それを自分のせいだと思い込んでしまった西宮が・・・という巻。

ここで崩れてしまったように見える「仲間」「友だち」というのもよく見ればその欺瞞性というか、もともとそんなものは存在していなかった、というのは傍から見ればわかるのだが、当事者たちはそうはいかんわな、ましてや多感なティーンエイジャー。

石田の反撃は、皆がそれを維持するために各々まとっていた欺瞞性を的確についた。なので皆、自分の一番痛いところを突かれたわけだ。
ただ、とっさに反撃してしまったとはいえ、実はそのことでいちばんダメージを受けたのも石田自身なわけで、明らかに彼も変調をきたしてしまう。

そんな彼を、唯一これまで自分をまともに「見よう」としてくれた存在として愛している西宮は自責の念に駆られる―すべては自分の存在が原因だと。

皆誰もが持つ小さな自己欺瞞という弱さ、自分への自信のなさ、その自己肯定感の薄さ故に世界を直視できない、結果その齟齬を他人のせいにしてぶつけてしまう。

そういう人のもつ弱さのネガティブスパイラルは、すべていろんな意味で”弱い立場の人”へと集中する。

そういうことが良くわかる、人間のクソさ・クズさの部分が良くわかる作品ですこと・・・。

いやー、もうなんか全てにおいて減点法なマンガなのでつらいよねえ・・・いや必然性があるからそうしているんだろうことは分かるんだけども。

まあここまできたら最後まで一応付き合うつもりでいるが、ラストにどういう光景を持ってくるのかで大きく評価が変わる作品になりそうではある。

もちろん、一般的に多くの作品もラストの印象で作品評価は変わるかと思うが、なんかこの作品は下手すると『ダンサーインザダーク』並みにえげつないことになりかねんような気もするし。

おまけにここまでの描写のいやらしさというか陰湿さというのは『ダンサー~』をある意味越える。
日本ならではの「空気を読む」文化故のヘドロの底の真っ黒な泥をちまちま顔に塗りたくられているような気分だ。

それをぬぐって終わるのか、その泥沼へ読者を徹底的に沈めて終わるのか。
そら評価は異なって当たり前というもんでしょう。

できればここまでの陰湿な描写をやったからこその、逆転を望みたいところ。

たとえそれが分厚い壁の隙間からのぞくわずかな光であっても、きっとそれは鮮烈に光って見えるだろう。







※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

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