予定より長くなったので記事を分けてみた―ということで後編です。
TOKYO MX 初音ミク・マジカルミライin横浜アリーナ
客電が消えると、なによりまず最初に気づくのが緑のペンライトがぎっしりと会場を埋め、まるで蛍が飛び交っているかのようだったのが印象的だった。
(正直これだけでも来た甲斐があったかな、と思えるほど美しい光景だった)
そしてオープニングのPVから本編へと入りミクさん登場!
自分はもとから見えないこと覚悟でアリーナ席を選んでいたが、やはりほとんどディティールは見えなかった(笑)。
しかし会場の熱気と、遠景でぼんやり見えるのがかえって「ああ、ライブに来てるな」と感じさせてくれるというか―むしろ”動き”は生々しく見えた。
(このあたりはちゃんと考慮されてステージ上段+左右にちゃんとスクリーン設置され、常にステージ上をアップで見れるようになっていた)
加えて今回は、バックバンドが同じステージ上ではなく、二階建てセットの上段で演奏しているため、ミクさんのスケール感が最初なかなか把握しづらかった。これは光学的な理由(おそらく完全に背景にボックスを作りたかった?)ではないかと思うが、諸刃の剣的な側面はあったように思う。
しかしとにかくそういったことを覆すのが、会場の熱気!
当日、国内シンセサイザー奏者の第一人者である冨田勲氏もいらっしゃったらしいが、御歳80を越えるというのに2時間近く周りの熱気に押されて立ちっぱなしだったらしい!?(某掲示板情報)
これはもちろん、ファン側の熱意のあらわれだと思うが、やはりそれを引き出していたのは、バックバンドの熱い演奏と、SEGAの技術陣によるべらぼうなクオリティで動き回るミクさんたちによるものだろう。関係者全員が本気なのがよくわかる。
特に今回は、両サイドのギターと積極的に絡むような演出もあり、非常に”燃える”展開!
特に後半のルカ⇒リン⇒ミクとそれぞれがギターをかき鳴らす流れでは、客層が違っていればモッシュやダイブが出ていても全くおかしくない盛り上がりだった。
(後半に行くにつけてBPMの上がる曲順だったというのも計算されているんだろうが―これバックほんとよくやったと思う、体力的にタフじゃないとこのステージ務まらないだろう―なにしろ主役のミクさんは”まったく疲れない”のだからw)
そしてそこからglow、TellYourWorld、Odds&Endsなどの怒涛の流れで会場の熱気は頂点に。これだけ名曲を持ち歌として持っているミクさんだからとはいえ、ここはバンドと演出陣の素晴らしい頑張りによるものだと思う。
(公式の後編―コンサート編。この『Odds&Ends』は動きといい、アンコール前の本編最後の曲であったことといい、今回を代表する1曲だろう―正直まるごとフルであげてくるとは思わなかった。ちなみにラインで拾ってる音らしくクリアーだが、会場で聴くと歓声と入り混じって非常に盛り上がった)
頑張りといえば、肝心かなめのミクさんのビジュアルを担当する、SEGA技術陣のそれも素晴らしかった。
上記の動画見てもらえばわかると思うが、本編最後の『Odds&Ends』では、これでもかといわんばかりにミクさんは徹底的に動き回る―文字通り心から躍動している。責任者の方の一人が「俺たちは映像屋じゃなくてゲーム屋だw」とぼやきつつも、注げるものを全力で注いでくれてるのが本当によくわかる。
これはミクさんだけでなく、都度登場するほかのボカロの衣装換えが頻繁にあったことからも見てとれる(ミクさんは後半のトリ近くまでほぼほとんど全曲でお着替えがあったのではないか?)。
ほかにも今回は最大3人で同時の絡みがあるなど、技術的にはかなりハードなことをやっていると思う。
しかしなによりも素晴らしいのは、そういった技術・演出的なところを忘れて、会場が一体となって盛り上がれるモノ―そう”本物のライブ”を観客に見せていたことだろう。これはもう関係者全員のチームワークとしか言いようがないと思う、スタッフ全員GJや!!
そういった盛り上がりのピークで、銀テープの特効もあり、本編終了。そして当然すぐアンコール(笑)。
ここで憎いのが、ミクさんもちゃんと衣装換えで上半身だけTシャツに着替えているという演出、くー!?
そして、アンコールとして2曲やって、無事全編終了!
(左:終わってもアンコールを続ける1万人の観客に「気をつけて帰ってね」攻撃を繰り出すミクさんw)
今回は、これまで行われてきていたこういったコンサート系のイベントの中で、いわゆる「定番」な曲をはずして、かなり新し目の曲を並べたセットリストだったようだ。
自分もここ数年は精神的余裕がなくてボカラン(ニコ動でのボーカロイド曲のランキング番組)も見ていなかったが、知らない曲―しかし良い曲が多かった。
しかし上記のように、後半の山場は怒涛の定番曲ラッシュで盛り上がりをちゃんとつくっている。
(今回はなんとかの名曲『LastNight、GoodNight』までやった)
あとでセットリストの確認をかねて、某巨大掲示板の該当スレッドを覗いてみると、もっと定番曲やってほしかったという声がありつつも、新しい方向性を切り開こうとする製作側の積極的な姿勢に対し、多くのユーザーは好感を持って受け止めていたようだ。自分もこのチャレンジは全面的に肯定する。
ここまで6年ものあいだ、初音ミクがなぜ消費という行為に喰い尽されることなく、ここまで生き延びて―というかむしろ大きく羽ばたいて―いるのかは、こういう積極的かつ健全な”代謝”が常にミクさんのまわりでは起こり続けているからだろう。
初音ミクという記号は変わらない―しかしそれを構成する一つ一つの音という細胞は、そのユーザーの数だけ常に新たに生まれ変わっている。
(やばい、『方丈記』じゃん!?)
初音ミクという”川”いや、ある意味”激流”か―それは多くの人たちを巻き込んで、常に新たな流れとともにある。
その”川”を流れるCGMという水が枯れない限り―初音ミクという存在は、常に進化し続けていくだろう。
困った、こりゃ今度は肉眼でみれる距離でみたくなっちゃったじゃないか(苦笑)。
そこに自分の好みと重なるものがなくとも、目の前でなにかしらすごいことが起きている―そういった感覚を感じられる、いまの時点で数少ない”活きている”ムーブメントの一つであることは保証する。
音楽や創作―なにかしら”モノを創る”ことに興味がある、関わっている方は、機会があればぜひ偏見の眼鏡をそっとおろして、一度ご覧になってみることをオススメする。
むしろこれをいま”感じず”にしてどうする!?そんな気分です、ハイ。