【レビュー】『シドニアの騎士 10巻』弐瓶 勉

標準

伏線を処理しつつ、比較的インターミッション的なエピソード群。ほっと息抜き的な巻。

『シドニアの騎士(10) (アフタヌーンKC)』



大重質量砲発射の反動で落下する纈(ゆはた)をかばって重傷を負ったイザナ。なんとか生還するも、谷風に連れられ帰ってきた自室には、なぜかヒ山さんから進呈されたコタツが鎮座し、纈とつむぎが同居しているのだった。一方岐神(くなと)=落合は、つむぎに続く第二の融合固体=「かなた」を育成。外生研で極秘裏にこれまでに見られなかった小型の飛来型ガウナを放置・観察するなど、不穏な行動を続ける。しかしつむぎのように穏やかな性格でない「かなた」は、ついに暴走を始め、組み込まれていた重力放射線射出装置を暴発、岐神を巻き込み、周辺の設備を破壊する。そんな危険な「かなた」を小林艦長は強力な武器となると判断、育成を続行させるよう科戸瀬博士に命令する。一方イザナは、孫を気にしたおばあちゃん(=科戸瀬博士)の配慮で、谷風との泊りがけの旅行(調査)に出発するのだった―。

帯見るとアニメ化決定ですか。作画どうすんだ、こんなぐっちゃぐっちゃなのw
(ガウナ等ディティール的な意味でw)



イザナくんメイン・ヒロイン化推進巻、でしょうかね(笑)。
ひとりパイロットスーツも、黒いかっこいいヤツに変わってるし。

前巻までのレビューで、谷風グルーピーはフリークスだらけだと繰り返し指摘しておりますが、そのなかでは、女体化の進むイザナ君はある意味、いちばん正統派ヒロインにふさわしいといえばふさわしい。

性格もけなげで、いじらしいし。
(まあ他の女の子たちも全員そうですが)

しかし油断するな!いちばん強力な全てをちゃぶ台返しする昔の女(星白)がいつ出てくるかわからないぞ!?(笑)

今巻は、久々に纈が趣味のプラモ作りしたり、ヒ山さんの大暴れ出てくるなど、ここまでの殺伐とした感が薄く、比較的ほっこり感の強い一冊。

ただし、不穏な感じの「かなた」の登場や、外生研の田寛さんがシドニア血線虫に操作され自死させられてしまうなど、物語的にはちゃんと進めるべくところは進めているという、非常に「うまさ」を感じる一冊。

あと、カラーページのタッチが少々試行錯誤している感じに対して、モノクロの本項の部分は、洗練度が増している印象。
例えていうなら、バンドデシネに動きと、生き生きとしたキャラクターを加えたような印象を受ける。
ある種の品すら感じられる部分もでてきており、非常に良い。

さらにいうと「んー、なんかこんな雰囲気のマンガ読んだことあるぞ?」

と頭ひねってたんだけど、わかった。

原作版のナウシカに似てるんだわ。
(巨神兵的な融合固体の描写があるのもそうだが、どろどろぐちゃぐちゃwなところとか)

もちろん、著者がそういったところを意識して真似ているとは思わない。
むしろ、これまで消化吸収してきたものが自然に出でてきているといった印象かな。

たとえば、つむぎちゃんの本体のマスクの意匠ってなんとなくウ○トラマンを思いおこさせたりもする。
自然と出てきているんだろう。

まあ、そういったウル○ラマン顔の、身の丈数十メートルの乙女が好きな人との会話の果てに

「もう見ないでください きゃー」

と照れて飛んでいくわけだからなあ。(・・・・・)


いろんな意味で凄いマンガだと思うわ、イヤほんと(苦笑)。


※帯にもあるが、本巻のつづきの部分を現在発売中の掲載誌(アフタヌーン)で読めるそうである。

『新装版 シドニアの騎士 (全7巻)』










※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

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