フリーソフトにもかかわらず、圧倒的な操作のしやすさと膨大なユーザーライブラリを擁する3DCGアニメーションツールMMD(Miku Miku Dance)。
そのMMDを使ったアマチュアCGアニメの大会であるMMD杯の第9回が先週閉会、結果発表があった。
回を追うごとにどんどんクオリティが上がっていく本大会だが、技術だけでなく、アイディアでも勝負できるいい意味のゆるさも持つ懐の深さを持ち続けているのが、なんとも素晴らしい。
今回は投稿作品数も700本弱かつハイレベルのものが多かったように思うので、個人的な感想を交えつつ紹介しておこうと思う。
大会の形式としては、会場となるニコニコ動画へ定められた期間に規定のレギュレーションを守って、MMDで作成した動画を投稿をするだけ、ということらしい。
(公開分数を絞った予告的な動画を受け付ける「予選」とフルサイズの「本選」があるようだ―受賞の対象は本選動画のみ)
審査基準としては視聴者がニコニコ動画の「マイリスト」(お気に入り)へ登録することによってポイントとなり、登録数が多い動画が総合優勝の模様。
ただし総合優勝以外に、実に多彩な各賞が毎回用意されており、客観性という視点からゲスト審査員も招待されている。
今回のゲストは超ベテランのマンガ家・弓月光氏ほか、企業枠ではSEGAなどビックネームが並ぶ(詳細は以下の本選開幕動画の後半を参照)
『【ニコニコ動画】【第9回MMD杯】MikuMikuDanceCup Ⅸ 【本選開幕告知】』
これまでの大会もチラ見はしていて、大会閉幕後に入賞作などをチェックはしていたんだけれど、今回は選考期間中にいろいろ見てみたが、本当にレベル高い。
なにより驚くのが、これらの動画の中で使われているキャラクターのモデルのほとんどがユーザーメイドのモデルであるということ。
(エフェクトにしても大半がそうで、ビームマンPというエフェクトで有名な方が、かなりの数を提供してらっしゃる)
それらのフリーな素材にユーザーの努力とパッションで三桁の数―今回などは総数700弱だから四捨五入すれば1000に届く―のCGアニメーションがあるということになる。
これはなかなか他を探してもない規模の大会だろう。
※数は少ないが、海外からの参加組も出てきている。
そしてその激戦を勝ち抜いて手にするのは賞状や賞金ではなく、MMDで作られたトロフィーのみ(!)、というのがまたなんとも潔くていい。
そう、勝者が手にするのは純粋に視聴者からの賞賛の声だけだ―。
ということで、個人的に印象に残ったものをここでも紹介しておきたいと思います。
【第9回MMD杯本選】ボカロレーシングGPファイネル
まずはいかにも”らしい”感じの一本。スピード感やアクションなどでちゃんと最後まで見せる作品になってる。
(以下このレベルの動画がごろごろあるのが恐ろしい・・・w)
【第9回MMD杯本選】 君のいないこの街に花を
かといって、技術やアクションがなければ勝負できないか、といえば全くそんなことはない、という良い証拠がこの一本。ベタな内容だけど最後泣きましたね、ええw
【第9回MMD杯本選】WHITE & RED
そして上のような動画と並行して、こういう本格的な演出の一本も同じ土俵で勝負している、それがこのMMD大会の面白さであり、懐の深さ。ちょっとしたショートムービーとしてクオリティ高い。
【第9回MMD杯本選】キザムヨー【ラーメンタイマー】
かとおもえば、こういう電波系・ネタ動画もwみ、耳に残る、洗脳されそうw
【第9回MMD杯本選】ドライヴは好きですか?【MMDモータースポーツ】
【第9回MMD杯本選】9 -nine-
この二本はどちらも製作者のもともと好きな趣味があって、それがあってこその動画、というのが伝わってくる。ある種いちばん望ましい形の系統かも。ビリヤードに至っては実在の女性プロのMMDモデルまで作って作中で登場させてます(謎の人脈とコメント入ってたw)
【第9回MMD杯本選】 ちびっとインパルス Zero
大作に埋もれがちだけれど、こういうかわいらしさ、空を飛ぶ爽快さを感じさせてくれる一本も。作中のチビ飛行機が魂を持っているような演出―このメンタリティが案外日本の伝統的な精神文化の一つで、ひいては本大会がここまでの規模にあるということの理由なのかも。。
【第9回MMD杯本選】バレーにかけた青春
こういう一発勝負の作品もwラーメンタイマーにも出てきた「目が死んでる」ミクさんは、たしか任天堂DSかなにかのミクさんゲームのキャンペーン時の着ぐるみがモデル。その着ぐるみが目が死んでいて「ミクダヨー」と名づけられ、こういった界隈でネタにされている模様(苦笑)
【MMD】デフォ子の小さな旅 ~ The Small Adventure ~ 第3話
これは凄い一本。MMDだけでなくadobeのAfterEffects他を使っているっぽいけれど、アイディアと技術力がかみ合ってすばらしい作品となっている。自分は流し見しているときにこれを見つけられてなかったので悔しいの一言。
【第9回MMD杯本選】Groovin’magic×へちょ☆マギ=買い出しにいくよ!
これも表彰式の結果発表で知った一本。SF作家の野尻抱介氏が紹介してらっしゃった。かわいさとリズムのよさで、ちょっと子供番組でも流れててもよさそうな。MMDほかボカロ界隈ではこういう子供うけしそうな動画もわんさとある。
【第9回MMD杯本選】 Liberal Life 【MMD-PV】
これもそんな一本。明るい感じで気分を上向きにしてくれます。
【第9回MMD杯本選】 レンきゅんクエスト
こういう中学生が考えそうな動画も参加できるというのが凄いw動画というかほとんど紙芝居だけど、演出のリズムのよさで最後まで見てしまう。腹がいたいw
第9回MMD杯本選】遮二無二角煮
演出ということでは、この無駄な壮大感はほかになかったwかけつけてる太目の女の子(太目ニク)も元はといえばミクさんの派生キャラ。すっかり定着している。こういうキャラクターの幅の広さも年々ひろがり、結果作品の幅もどんどんひろがっている。きれい・かわいいキャラばかりでない、というのがこのMMD界隈の裾野の広さを示していると思う。
【第9回MMD杯本選】かわいいと思ったら負け【ガキの使い七変化】
とはいえ、かわいいキャラはやはり正義なワケで(笑)。本大会準優勝作品。この発想は日本ならではかも。自分もたぶん竹刀で四五回ケツシバかれてると思います(苦笑)。
【第9回MMD杯本選】初音ミクのごっつええ感じ2
これは元ネタのトレースだが、いかにMMDモデルによっては多彩な表情がつけられるかの良い証拠。著作も出ているのでプロと思われるISAO氏製作のリンちゃんのモデルはほんとすごい。
遅刻組とあるのは本選投稿期間中に動画の投稿が間に合わなかったから。(なので選外)
【第9回MMD杯本選】ゲキド・オブ・めーちゃん!
個人的には優勝を上げたい動画(笑)。初見のときは酒で酔っ払って絡むのはどうよ、という気分もあったが(MEIKOさんは酒豪というユーザーの間での設定がある)、この動きのよさと軽快さ、アクションと小道具のネタの素晴らしさ、そしてなによりMEIKOさんの表情のよさ!ある種トムトジェリーのような”アニメーション”であることの楽しさの王道をいく作品だと思う。
これが未受賞というのはなんとも複雑だが、それぐらい本大会は激戦だったのはいって良いと思う。
【第9回MMD杯本選】初音ミクの大暴走
ある意味上とネタ被り(笑)。もともとその傾向があったが、本大会でMEIKOさんは一気に最強キャラという位置に定着した模様wこの製作者のかたは有名な「ゲキド街」セットの製作者で、本作品もその最新バージョンのお披露目もかねている模様。途中の「びょーん」と伸びるところは何度見ても笑うw
【第9回MMD杯本選】ボンバーミク
ここでもMEIKOさんがw
【第9回MMD杯本選】BOOMMD!
そしてなにげにこういった作品群の舞台を支える、多数のユーザーメイドセットの紹介となる動画。九州新幹線のCMを模しているが、あの暖かい気分がここでも再現されている。
とまあ、ざっとではあるけれども個人的におもしろかった作品を紹介させて頂いた。
この連休で時間がある方などは、是非一度気になるものだけでいいのでご覧になってみて欲しいと思う。
つぎのMMD大会はこの冬?第10回大会として開催される模様。
※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正