クリストファー・ノーラン作品はなんだかんだで信頼できるので観に行ってきた。
作品の性格上、大きな画面のほうがいいかと思い豊島園のIMAXで。めずらしくIMAX2Dなんだな。
世界各地でじわじわと広がる天変地異に、人類はその生存を徐々に脅かされていた。かつてNASAのパイロットだったクーパーは飛行中の墜落事故のため引退し、いまは農夫として父と二人の子供と暮らしていた。その彼らの家に現われる”幽霊(ゴースト)”。その出現した痕跡がモールス信号であることに娘のマーフが気づく。そしてそれはある座標を示していた。結果、彼は滅びゆく地球に代わる新天地を見つけるため、そのかつての腕を買われて光の速度を越えた宇宙への旅へと召集されることになる―最愛の娘を残して・・・・・。
これも若干予告編詐欺気味の映画である(笑)。
要は重力変異かポールシフトかで、各地で強烈な天変地異―砂嵐が発生、作物がどんどん育てられなくなっていく。ほぼ体をなしていないながらも秘密裏に活動を続けていたNASAは地球に最期が迫っていることを予知し、外宇宙へと人類の移住可能な惑星を見つけるべく、残った力を振り絞って探査船を飛ばしていた。
そこに経験豊かなパイロットとして、主人公クーパーが呼び出され、星の世界へと旅立つことになる。
スケールの大きさから必然であるとも言えるが、最近のノーランの悪癖か―かなりの長尺(3時間)の大作である。加えて、その宇宙空間やワームホールその他の描写が、最新の知識をもった専門家が監修にあたっているそうで、このあたりの細かなディティールの部分のガチっぷり、というのがある意味本作最大の見どころだろう。この点、IMAXでの鑑賞を選択したのは大正解だった―これはご家庭のテレビで見てもスケール半減だと思う。
そしてそういったガチの科学考証、そのうえで外宇宙での居住惑星探査・・・。そう、出てくるんですね、タイムパラドックスの問題が。
そこがストーリーのギミックとなり、1時間が数十年になってしまうブラックホール近傍惑星のシーンだったり、エピローグ部もそのギミック故の感動のシーンがあったりこのあたりは素晴らしい。
また些細なことかもしれないが、ハリウッド映画の宇宙アクションものにありがちな宇宙空間でのスラスター噴射の際の派手な効果音などがなく、無音の状態でただスラスターが噴射されるといった細かなこだわりの描写が、一見荒唐無稽に見える本作のストーリーにどっしりとした重みを与えている。また本作はかなりの部分で実際のセットを組み、CGによるシーンは極力抑えられているそうだ。ある程度のバジェットを自由に使えるクラスの監督は違うなあw
ただ、だからこそドラマパート・・・というか地球外探査に至る説得力というか、必然性の部分がぺらく感じてしまうのよなあ、相対的に。
このあたりはノーラン監督作品常連の名優・マイケル・ケインのあの渋い演技をしても説得力を与え切れずに終わっているように思う。
外宇宙探査船の中は密室劇。くわえて上記のようなディティールやどこまでも壮大に広がる一面の氷の雪原や、数キロメートルはありそうな巨大津波などビジュアル面で心奪われるシーンが多く、見ごたえはある。
ただテーマというか物語の骨子が、その探査船にいる父と地球に残された娘の愛情、ということもありどうしても地球側の描写へたびたびスイッチする。そしてそのスイッチした先のドラマも悪くはないのだが、その双方をリンケージさせる部分―ここにどうしても弱さを感じてしまう―物語がクライマックスのシーンへ行けばいくほど。
なのでトータルとして、映画館で観る映像作品としては素晴らしく見ごたえのある壮大なビジュアルなのだが、そのストーリー上の核となる課題の解消の部分が、どうしてもご都合主義に見えてしまうのだなあ・・・ほんともったいない。
もちろんこのあたり、科学考証的にはがんばっている・・・というか事象の地平で時間を越える、というのは流石だし、その事象の地平でのビジュアルも「ああ、なるほどなあ」という感じでうまく設計されている。
ただやはりこのあたり「それはええとして、事象の地平の中へ普通のシャトルに毛が生えた程度の宇宙船で重力にぺっしゃんこにされへんのかいな!?」というのはぬぐいがたくあるわけで(苦笑)。
なので、親子の絆・・・というところにこだわらず、単純に外宇宙探査組のドラマに集中したほうが傑作になる可能性はあったんじゃないかなあ。
へんに”親子”というヒューマンドラマにこだわったせいで、逆にこのスケールでこそ描けたかもしれない人間ドラマを捨ててしまい、結果映像に反して物語がスケールダウンしてしまっているような印象を受けた。
なので映像としては「大作」、作品としては「佳作」というのが正直なところ。
以上、なかなかもったいない作品であった。
ただ、ビジュアルとしては繰り返しになるが素晴らしい。
特に自分がみたようにIMAXシアターの大きな画面で観る分にはもってこいの一本である。ストーリーはおまけとして、アトラクション的に観るぶんには悪くないかもしれない。
あと宇宙船のコパイとして出てくるロボットのデザインがなかなかおもしろかった。あんな走り方ありかw