【レビュー】『山田のこと』上條 淳士

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選挙の帰りに本屋に寄ったら
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

『山田のこと』(少年サンデーコミックススペシャル)





TO-Y 』や『Sex 』などのスタイリッシュな描線で知られ、明らかに「上條”以前・以降”」でコミックの描写スタイルに影響を与えた上條淳士の短編集。

タイトルにある「山田のこと」は氏の代表作でもあるTO-Yに出てくる山田二矢(にや)という少女を主人公としたスピンオフで、確か当時の単行本には未収録だった一作。
(自分は掲載誌であった少年サンデーの増刊号をいまでも大事に取ってある)

この山田二矢というキャラクターと本編通じてワンカットだけしか出てこないそのお母さんは、以降の上條女性キャラ―というか共著者であるYOKO氏のキャラか―のうち、太眉・黒髪系の原型といえるかもしれない、個人的にどツボである。

さらに上記「Sex」に出てくる斉藤カホというキャラクターが自分的には直球剛速球ど真ん中ストライクwなんだが、本書の表紙と中表紙をみるとやはりそのキャラクターとしての系列を感じさせる。
(ちなみに前も書きましたがタイトルから想像されるようなシーンは一切ない清い(笑)作品でございますw)

この表紙の一枚絵見てもらってもわかるように一発で人を惹きつける素晴らしい画力の持主だが、本作はそこにいたるまでの経緯が結果的に見れておもしろい。

で、けっこう本当の最初期の作品以外は読んでるのよ、自分(笑)。

そしてそれを見ると現在のスタイルに至るまでは発表年代である80年代コミックスの文法から最初から抜け出ていたわけでなく、やはりTo-Yの連載などを通してそのスタイルが出来上がっていったんだな、というのがわかって面白かった。

しかし白泉社の『Lala』とかにも書いていたのは知らなかった。(「FLOWERS OF ROMACE」)
これなどは巻末のインタビューでも語られているように、後に「Sex」などで確立した風景一枚の止め画で”間”を表現する、という手法の原型~過渡期の作品だろう。

なかなか寡作な作家なので新作が読めないのは歯がゆい限り。
またその画力だけで”商品”として成立してしまい、なかなかマンガとしての”作品”に出会えない作家でもあるんだが、やっぱりこの”画”で血沸き肉踊る作品を読んでみたい―。

そう思わせ続けられる作家なんだよねえ。


まったくの余談ですがw

当blogの読者様なら自分が下手な絵を時々描くのはご存知かと思いますが、自分が”こんな画描きてえなあ”と思って影響を受けた作家は3人。氏はそのうちの一人でございますw








※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

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