【レビュー】『ビリオネアガール 2巻』支倉凍砂 桂明日香

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先日本屋にいったら出てたので。連載中断後、再開してるらしいのは知ってたが、単行本意外と早かった。

『ビリオネアガール(2) (アフタヌーンKC) 』



ヒロインの紫(ゆかり)は主人公・恵の学友たちと郊外へバーベキューに出かけ、はじめて歳相応の楽しい時間をすごす。そのバーベーキューの買出しのために普段動かさない1億円という額を口座に動かしたため、後日銀行から確認のための訪問―という名の営業があり、付き添いを頼んだはずの恵がそのとき出てこなかったのを理由に、紫は恵に買い物に付き合うようにいうのだが・・・果たして億万長者の買い物とは?

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【レビュー】『花やしきの住人たち』(全3巻)桂明日香

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同じく隣町のbookoffにて。1冊105円x3巻。

おそらく、ここまでの桂作品のなかで一番この作者の持っている要素が全て体現されている作品ではないか。
ある意味”代表作”といってもいい内容だと思う。

これはbookoffで購入して正直すまんかった。ファンとしてはちゃんと定価で購入するべきだった。

『花やしきの住人たち』




放蕩人の父を持つ桜安芸は、その父の失踪に伴い祖父が理事を務める聖花女子高等学校の女子寮―通称・花やしきへ住むこととなった。そこで出会った北広蓮華、恵庭あやめ(杜若)との奇妙な三角関係が始まるが・・・。
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【レビュー】桂明日香二題

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週アスのハニカム二週連続休載だがちょうどよく新刊がw
成分補給に購入。

『神話ポンチ 2 (ヤングガンガンコミックス)』


前巻で登場人物の導入もすみ、さあ本編!と思いきや本巻にて完結。
前巻刊行の時点でもそれとなくそのあたりはにおわされていたがまさか二冊で終わるとは思わなかった。

ただ本巻の巻末あとがきでも書いてあるように最初からこのエンディングは想定されていたようで、そのあたりは一巻の同じく巻末あとがきでキャラクター名の由来から想像はできた。

ただせっかくギリシア神話をベースにした魅力的なキャラクターが多数登場していたのにそれを十分に展開する紙数なく終了してしまったのは正直なところもったいない気がしないでもない。
(ここは作者自身も言及してましたな)

とくに前巻ではあれだけ存在感のあったアテナにアルテミスの二人のウェイトがみごとにしぼんでいる。
まあこのあたりは完結を急いだ故だろうか。

たぶんそのあたりなんらかの事情はありそうだが、コレはこれでちゃんと作品としてまとまってはいるのでよしとする。

しかしあのアテナの天然ボケは正直もう少し見ていたかったw

『ビリオネアガール(1) (アフタヌーンKC)』




こちらは原作付きの模様だが、作風というかテイストは桂作品のそれをちゃんと感じる。
(唯一違う点はやや前述の”ボケ”成分が少なめなところか)

デイトレーダーとして天分の才を持っていたばかりに、有り余る富と引き換えに普通の生活を失ってしまった少女と彼女を知る叔父から彼女のことを頼まれた主人公の物語。

桂明日香という作家を考えるときに上記からだけではそのシチュエーションがマッチングするか首をかしげる向きもあると思うが、ヒロインの持つ屈折した暗さというのが実はかなり根本的なところでシンクロ率高いのではなかろうか。

ただし前述のように”ボケ”成分が少ないこととデイトレードというモロ”金(かね)”という抜き差しならぬものがテーマとして含まれているので、けっこうガチで逃げ場のない作品になる可能性はあると思う。

版元から講談社での連載作品のようだが、案外その渡りの部分や作品の持つそういったところの性格故に週アスの連載がたびたび落ちる原因になっているのかもしれない。

だとしたら講談社もけっこうアコギなことするな。
まあ出版不況がマンガ業界にも深刻な陰を落としている昨今

「こいつは使える!」

と思ったらなりふり構わずなのかもしれんが。

そんなことよりちゃんとモーニングてこ入れしてくれ。
佳作は多いのは認めるが主砲がないんだよ、バガボンド休載しっぱなしで。
(井上氏はかなり身体壊されている模様だし)

「ああ、今週もハズレ号か」とがっくり肩を落とすこと多いんだよ。
『へうげもの』載ってなかったらコラムページだけが楽しみってそれどういうこっちゃ!?
(4コマはまた別ね)


いかん最後脱線したw










※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

【レビュー】『螺子とランタン』桂明日香

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今週の週アスでハニカム休載だったので桂明日香成分補給ということでw

『螺子とランタン (角川コミックス・エース)』




これがこの著者のデビュー作とはしらなんだ。
以前読んだそこはぼくらの問題ですから とキャラクターそれぞれの要素が(配置は異なるが)似ているのが面白い。

両作に通じていえるのは、それぞれの登場人物が小さな女侯爵と貧民街上がりの家庭教師だろうが変態天才プログラマーと自爆型・被ストーカー女子高生だろうが(苦笑)、自分の持っている社会的属性と自分の内面のギャップに悩まされているという点だろう。

もっといえば、ちゃんと子供をやれないまま年齢だけ大人になってしまった男どもを”考える”ことより”感じる”ことで躍動するヒロインたちが解きほどく話でもあると思う。

もっともっと簡単に言えばリュック・ベンソンの『レオン』型の物語の変形バリエーションといってもいいか。

で、この人の作品のいいところは、そういった歪さなりコンプレックスなりをもった主人公やヒロインたち対となるキャラクターを得ることで、最終的に双方が、そのコンプレックスや悩みからゆっくりとほどかれてゆく回復と成長の物語であるというところだろう。

ある意味物語の王道だと思う。

その点、現在連載中のハニカムは掲載媒体と連載形式の特殊性からちょっとこのスタイルからは外れていて、逆に物語としてどう着地させるのかが楽しみになってきた。
(一番違うのは主人公がこれまでの作品のように根本的な部分でコンプレックスを持っていないところだろう)

加えて可愛らしい絵柄のわりにきわどい描写をやってもあまり下品にならないというのは非常に貴重だと思う。
ある意味総エロ肯定という下品な世の中にあって天然記念物といってもいい。
(最新作の『神話ポンチ』あたりからするとこれは言い過ぎかw)
これはご本人女性というところも大きいか。

既刊の単行本はあと何冊か出ているようなので、そのうち経済的な余裕ができたら読んでみようと思う(泣)。
そのうちこの人の長編とかも読んでみたいような気がする。








※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正