投資家が「お金」よりも大切にしていること/藤野英人

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以前に読んだビジネスに役立つ「商売の日本史」講義が面白かったのと、単純にタイトルそのものに興味がわいたのでamazonでぽちっとな。

投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書) [新書]
藤野 英人 (著)


結果、ものすごく面白い一冊だった。おそらくいまの日本人全員にいちばんかけている「お金」に関するリテラシーの核心の、少なくともその一部を見事についている一冊だと思う。曰く日本人は”清貧の思想”といいながら実は「お金が大好き」で「ハゲタカ」で「不真面目」だ、と。

これらの文言をみてむっ、とされた方は是非一読をオススメする。

前著を取り上げたときにも書い多と思うが、著者はレオスキャピタルワークスという投資法人の運用責任者。
顧客から資金を預かり、運用投資するにあたって数千社を取材し、その経営陣と会ってきたという。

本書は、そんな著者が多くの日本人が、普段疑問に思わず、改めて考えようともせずに済ませている「お金」の本質的な意味について、わかりやすい例で示しつつ、そのひずんだ認識に異議を唱えている一冊だ。

最大のポイントは冒頭にある「はじめに」のなかで言われているように

「お金には本来”色”はついていない、故にその使い方は私たちの考え方や態度が100%反映される」

というところだろう。この認識無しに「お金は汚いものだ」「儲けているやつは悪いことをしているに違いない」という漠然とした空気が、疑問ももたれずにあたり前のように流れている点を考えても、本書に指摘されるまでもなく、日本人の金銭観の歪みが見て取れる。

さらに以下のような刺激的な言葉を並べたうえで、それらをひとつひとつ証明するかのように解説してゆく。

・日本人は世界一ケチな民族
・日本人は不真面目なお金教の信者
・「なぜ国がやらない!」と怒り出すのが日本人
・誰がブラック企業を生み出すのか?
・日本人は仕事も会社も同僚も、あまり好きではない

(一部を抜粋)

いちいちうなづくしかない。

特に個人的に痛感している、最近世の中にはびこるやすい・狭い”正義感”や、それに形を変えたある種救い様のない、怨念のような”嫉妬”のメンタリティと同根のようなものを見て取れたのは収穫だった。

そう、昨今の日本人て、一見おとなしそうには見えるが、決して”いいひと”でもなんでもないぞ?

本書を読めばわかると思うが、基本それは怠惰で不真面目なだけだ。
(これはもちろん自分自身も含む)

そういう意味で、本書は読者にとって金銭観を通した、ある種のリトマス試験紙的な一冊ともいえるかもしれない。

自分も、もう少し若い頃にこういう内容の本に出会えていればよかったと思う反面、その当時ではここまで率直に受け入れることは出来なかったかもしれない。

しかし本書に書かれているような認識を持つか否かで、そのひとの人生の豊かさ(これは金銭的な意味だけを指すのではない)は残酷なぐらい違ってくるだろう。

若い人ほど読んでおいてほしい一冊である。

「清貧」そのものが悪いのではない、清貧の本来の意味を、自己欺瞞のために変質させてしまっている日本社会のメンタリティがキ●ガイなのだ。

本書にあるような「清豊」というのはイメージしづらいことが多いかと思うが、確かにそれを本気で目指さないと、日本人はどれだけ「お金」だけもっていても「貧しい」ままだろう。
(これは金銭的な意味だけを指すのではない)

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