秀吉の枷/加藤廣

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『信長の棺』の続編ということなのでamazonで中古セットで。

秀吉の枷/加藤廣



前作『信長の棺』を秀吉視点から描き、かつ著者なりの秀吉像を描いた一作といえるだろうか。

基本的な設定・世界観は前作と同一なので、三分冊であるにもかかわらず、実はあまり特筆すべきところがない。

総じて司馬作品のような明るく、器の大きい天下人としての秀吉という側面は少なく、貶めているわけではないだろうが、秀吉という人物の一般的なイメージである爽快さといったものが全く見られず、矮小な感じの人物に描かれていて(こういう側面も確かにあるとは思うのだが)、信長をある種はめるのも成りゆき的な感じが強い。

結果、前作のような独自の視点を緻密に組み立てたような感じはあまりせず、人間としての醜く情けない部分ばかり強調された秀吉の部分だけが目立ち、物語全体にはあまりカタルシスを感じなかった。

少し期待していた桶狭間での秀吉の暗躍、というのもメインで描写されず回想的に処理されていていまいち。

ただ、文章の組み立てが上手い+それなりにミステリ的な側面もあるので、読めなくはない。
そういった作品。

まあ、こんなもんかいな、と。

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