1年遅れて、ようやく話題の一作を通しで見れました。
結論:見た甲斐あった!
twitterなどでもけっこう大の大人も話題にしており、ちょうど一年ほど前のリアルタイムの放送時から気にはなっていた。
ただ、我が家にはまともに映るテレビがない、特にストリーム放送が追っかけなどであるわけでもなさそうだった―
なので、まとまってからみよう、と。
そしたら大人気でDVDオンラインレンタルで借りるのに結局半年以上待つ羽目に・・・orz
ただ、その甲斐は十分にあった作品だった。
平和な街の中学生・鹿目まどかの前に、謎の転校生、暁美ほむらがあらわれる。
その転校生は、なぜかまどかが見た昨夜の夢の中で、一人何者かと戦っていた。
そんなまどかの前に、謎の白い生き物・きゅうべぇが現れる。
彼はまどかに「僕と契約して魔法少女になってよ」というのだが・・・。
とまあ、あらすじはwikiなどを見ていただくとして―。
自分はいわゆる魔法少女もの―特に最近の―というのはほとんど見たことがない。
なので、普通の女の子が魔法少女やら魔女っ子に変身して、敵と戦ったり、問題を解決したり、だろうという想像がつく程度。
その状態で、こういってしまって良いのかはわからないが、巷でいわれるように、この作品はそういった系譜を上手く偽装した本質的には別種の作品だろう。
個人的にはSF的アイディアが要所要所で非常にがっちりと組み込まれた、ある種のSFファンタジー作品といってもよいと思う。
ただ、この作品はそれだけでなく、女の子の持つ独特の不安感や生きにくさ、背負わなければいけないもの―そして”女の子同士ならではの友情”をうまく記号化して表現したダーク・ファンタジーでもあるところがすごい―というかこっちが本筋か。
(魔法少女と魔女の関連性の設定など、そのヴィジュアルの素晴らしさと相まって本当に見事だ)
もちろんこの”女の子”云々の部分は私見だ。(さらに基本的にメインの製作陣は男性がほとんどのようだし)
しかし、やはりこの物語の核には”女性性”というものが逃れがたく組み込まれている、ということはいってよいと思う。
その証拠に、主人公・まどかの家庭の大黒柱となるのは母で、物語クライマックスでまどかの背を叩くのは父ではなく母なのだ。
主人公の親友・さやかがその魂の代償として回復を望んだ幼馴染・上条君のへたれっぷりといい、見事に男側の立つ瀬はない。
この点気にならなくはないが、この設定を男の子がやっても、確かに聖闘士星矢ぐらいにしかならんわな、という(苦笑)。
そういったベクトルを良しとして、物語を眺めてみると、シナリオの構造など、かなり丁寧に作られている作品だというのが感じられる。
全12本という中で、登場するキャラクターがそれぞれ数本づつ主軸となって、数セクションずつを支え、それが最後の主人公・まどかのエピソードへと収束する。
(なにしろタイトルに反して、主人公のまどかはほぼ最後まで魔法少女に”変身”しないのだ)
途中、一部のキャラクターのパーソナリティの背景の設定がやや甘い(杏子の家庭環境や、ほむらの過去がある種の典型的なキャラクター設定であること等)部分はあるが、それを上回るストーリー上の感情の奔流は、みごと最終話で結実する。
このあたりは監督・演出陣の力がありありと感じられてほんとうに素晴らしい。
また上記でも書いたが、劇団イヌカレーという作画ユニットによる敵=魔女のビジュアルが上品で本当に素晴らしい。
BGMも見事だ。格調高さとエスニック調が入り混じり、作品の重さにあわせたヘビィさも併せ持つ。
梶浦由記という方はこれまで存じ上げなかったんだが、ちょっと聴いてみよう―そう思ってサントラ出ているのか調べてみたが、単独では出てないのね、残念!
あと面白かったのは、本作品はいまの日本の抱えている、いろいろな問題に当てはめることのできる骨子を持っているな、と思える部分。
特に作中、少女たちを魔法少女へといざなう「きゅうべえ」のキャラクターは、これまでの類型の作品とは明らかに異質で、彼の作中のスタンスやセリフはなんとも含蓄深い。
(彼はある意味『ファウスト』でのメフィストフェレス的な存在かも―これほど少女を魔女へと誘うのにふさわしいキャラクターはないわな)
個人的には彼の姿・セリフで原発推進派や、某広告代理店御謹製・計り売りアイドルグループのプロデューサー氏のセリフをしゃべらせてみると、バカみたいにぴったり来るように思うのだが(笑)。
(あ、プロデューサー氏はちょっと違うな、彼はきゅうべえほど潔くないやw)
こう書いて、一つ気付いたが、この物語の素晴らしい点は「献身」の物語である、ということか。
「なんでも望みをかなえてあげる、だから僕と契約して魔法少女になってよ」
そう―その望みは、他人のものでなくていい、自分のためだけの望みで良かったはず。
にもかかわらず、作中の少女たちは愛する人の、大切な友だちの―そのために自分の魂を捧げる。
それをあくまでも”自分の望み”として―。
そういった利他の―献身の精神があったからこそ、物語は最後の最後で―あの絶望の中で微かな希望の糸をつなぎとめ、ある種の”救済”を得て幕を閉じる。
翻って、同じ”少女の物語”―ということで、昨今のアイドルブームをこの視点で考えて見ると、ある種ぞっとするな。
捧げるものを自分以外に持たない彼女たちは、やはり”魔女”へと堕ちていかざるを得ないんじゃないだろうか?
ということで、ファーストインプレッションとしては以上。
なんでも劇場化もされる、とのことなのであとなんどか書くことにはなると思う。
(たぶん、間違いなく観にいくでしょう、これは)
論評などもいろいろ書籍で出ているようなので、おそらくそのあたりにも触れることになるだろう。
いい作品、というのはこういうポジティブなスパイラルを産んでいくんだねえ。
久々に傑作らしい傑作をみれて、楽しかった
ハラハラしつつも、終わるのが惜しい240分でした。