法事その他で大阪に帰ってたんだけども、その〆に、ということで久々に大阪で映画でも見て帰るか、と。
ちょうど新しくなった大阪駅の駅ビルのなかに映画館があるというので、見物がてら見てきました。
はやぶさ関連の映画はこれ以外にも数本製作・公開されていて、正直どれを観にいけばいいのか迷っていた。
前述のように、たまたま実家に帰っていたので、TVのない自宅と違いなんだかんだで朝のニュースなどをTVで見てると、そこで主演の渡辺謙氏のインタビューがあり、ちょうどいま公開中である、ということも手伝って本作を選んでみた次第。
結果、正解でした。
まずいえることは、この映画、非常にストイックな作りである、ということ。
ハリウッドばりの過剰な演出や、その演出を盛り上げるための過剰なBGM的なものが一切ない。
淡々と―まるで主役である山口教授(本作でのJAXA川口教授相当の人物)のように、無駄なことは一切しゃべらない―そういう感じ。
しかしその状態で、最近の公開映画としては長めといえるであろう、2時間16分を最後まで見せきるのだ。
見てまず思ったのは(客層による興味の有無の差はあれ)「外国のマーケットでも売ることのできる普遍性のある仕上がりだな」ということ。
ご存知の方はご存知かと思うが、最近の邦画は、実は作品としてかなり良質の作品を排出している。
『下妻物語』や『告白』の中島哲也氏の作品などは言うに及ばず『ゆれる』や『ぐるりのこと』などいろいろあるが、残念ながら、いま日本の社会を支えている一番メインの層であるサラリーマン的な舞台のものではなく、やや特殊な舞台・シチュエーションの作品がほとんどだ。
逆にそういった会社組織、現実のビジネスに通づる舞台の作品では個人的に記憶に残っている作品はほとんどない。
(自分が見ていないだけ、ということも十分に考えられるが)
そういう市場の動向にあって、いまの日本の社会、そのメインとなっているビジネスマンたちの現場を―かなり特殊な例とはいえ―これほど地に脚つけて撮った作品というのは珍しいように思う。
そういった現実を感じさせるリアリティ―それが海外のマーケットでも通用するのでは、と強く感じた理由の一つだ。
その証拠に、といっていいかどうかわからないが、かなり有名どころの役者さんが多数出演しているにも拘らず「ああ、○○らしい演技だな」的に役者の名前を作中で意識する時間がほとんどなかった。
つまり演じている役者ではなく、作中の登場人物―その人物として見えているということ。
これって実は地味にすごいことだと思う。
あの渡辺謙ですら―さすがに全く色が消えているということはないが―普段の華やかさと180度逆の、寡黙でともすれば地味な山口教授という存在になりきっていた。
一番見事だったのは江口洋介か。これまでのイメージである前に出がちなところはありつつも、それが作中の人物の個性としてぴったり融合している。
山崎努もそうだ。アクの強さは残しつつも、それがちゃんと役の上での町工場の老職人、というところからはみ出していない、その器の中に納まっているのだ。
そして本作は、管理職を務める方こそ、是非見ておくべき一本だと思う。
チームとしての仕事の進め方、そのときの目的の設定に対して、チームリーダーはどうあるべきか。
メンバーの能力を最大に引き出しつつ、結果を最大限回収する、そのジャッジ。
断片的ではあるが、だからこそ学べる部分は多々あるのではないかと思う。
個人的に素晴らしい、と思ったのはやはり素晴らしいリーダーというのはネガティブワードを使わないんだな、ということ。
それがあるから、残されているわずかな可能性がぎりぎりのところで蘇ってくる。
”失敗しない”のが目的ではなく”成果を持ち帰る”のが目的である、ということを最後まで錯誤しない、混同しない。
意外とこれはできそうでできてないことだと思う。
久々に映画館で、それもあまり期待せずに見た割には、いろいろと勉強になる一本だった。
時間と予算があるのなら一見をオススメする。