緩慢な”地獄巡り”だな。
希望の見えなさ、暗さといい―ある種、それを楽しむ(?)エンターテイメント作品。
『シドニアの騎士(5) (アフタヌーンKC)』
更なる人間化が進む、奇居子(ガウナ)の再現した星白に、ある目的を秘めて迫る、岐神(くなと)を乗っ取った落合。
(外生研の田寛さんがあぁぁぁぁぁ!?)
一方シドニアにはガウナを推進源とした、小惑星ミサイルが迫っていた―。
演出的には、小惑星での本作初の重力圏下での描写や、デススター攻防戦を髣髴とさせる、侵入作戦など見所は多いが、物語はなんとなく暗い方向へ。
人工カビによる、ガウナ本体貫通弾の覿面な効果が、逆にガウナの人類側の知識の反映など、戦闘の激化を招いているようだ。
主人公の谷風が、経験をつんで、もう立派なベテランパイロットの貫禄。
勢威さんやサマリさんなどの、エースパイロットと並んで遜色ない。
(エース、というわけではないが久々の仄(ほのか)シリーズの姉妹も登場。平均生存率50%・・・なので、ある意味彼女たちも、もうベテランか。)
しかしそのぶん、ギャグは入りにくくなっていて、本巻では、連絡通路ではしゃいでチューブにぶつかったり、イザナ君に聞かずともいいカテーテルの話を聞いてぶん殴られてる程度(苦笑)。
そういったシーンの少なさも、このなんとなく重い”薄暗さ”に通じているのかもしれない。
いや、というよりも、一番気になる”主義者”落合の動きのほうが原因か。
なんにしろ、やり口がこういった悪役の定番で、不気味すぎる。
その落合の動きと、シドニア内と紅天蛾(べにすずめ)―二人の星白の存在が、おそらく物語全体の方向性を決める。
そして谷風をかばって、墜落するイザナ君。
愛、愛だねえ・・・。
平気で人がころっと死ぬ作品だが、彼(彼女?)は、できれば最後まで殺さずにいてあげてほしいモンです・・・。
※あとなんとなく以前と比べて、いい意味で線が細く・緻密になってきた印象を受ける。
ガウナ星白のドレスなど、なかなか可愛いらしかった。