【レビュー】『兄帰る』近藤ようこ

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困った、傑作すぎて感想がかけない(泣)。

『兄帰る』(ビッグコミックススペシャル)





時代物の近藤ようこ氏の作品の傑作は多々あってどれも甲乙つけがたいが、現代物の代表作といって良いのではないだろうか。

もちろん多々出ている現代物の作品をまだ全部読めているわけではないのだが、テーマといいプロットといい素晴らしすぎる。
(調べるとTVドラマ化もされていたようだ)

現代においての「家族」というもののもつややこしさや自分の人生の意味といった、今を生きる我々に共通普遍のテーマを淡々としたドラマの中に描き出す―大傑作である。

以前近藤作品を山田太一のそれと似たところを感じると書いたが、市井のなんの変哲もない人々を描いてこれだけの深みのある作品に仕上げられるのは、自分の知っている中ではこのご両名が双璧のように思う、凡庸の才ではできない―こんなありきたりの光景の中にこれだけのものを見出すことは。

また畏れ多いことに著者ご本人様からtwitterでコメントいただいたりで滝汗でしたがなにかっつ!?

その際に自分の中ではここ数年の邦画の中の最高峰のひとつと思っている『カナリア』のことにも言及されていて、本作のキーパーソンとなる失踪した兄―功一のモチーフは『カナリア』の中に出てくるある登場人物の姿に触発された部分がある、という点を教えていただいてこれまたちょーびっくり!?でした。
(いやーカナリア評価してくれる人少ないのに、自分の愛読している作家さんからこういった言葉を聞けたのは大感激でした)


ふと迷ったとき


あるいはいまの生活は本当にこれでいいのだろうか、そう思ったとき


ぜひ読んでみてほしい。


必ずそこには読むあなたそれぞれの結論がしっとりと胸の中に広がると思う。




大傑作である。










※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

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