amazonプライムにて。アメリカ製の映画の割には久々に正統派な感じのするオカルト作品。90分と短い尺、よくばらないストイックな舞台設定の制限でより心理的圧迫感を引き上げているという、ある種引き算の美学が成功した一本だろう。なんせ主役のジェーン・ドウが一言もしゃべらないのだ!(まあ死体だから当たり前だが)
遺体安置所と火葬場をかねた設備を家業としていとなむオースティンのところに、急な検死を必要とする身元不明の女性の遺体(ジェーン・ドウは身元不明女性の総称)が運び込まれる。ガールフレンドとデートする約束だったトミーは、老父を思いやりこの身元不明遺体の検死を手伝うことに。しかし検死を進めていくにつれ、本来凝固しているはずの血液が流れ始めるなど、つぎつぎとおかしなことが起こり始め・・・・・。
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2017年のアメリカ映画とのことだが、短めの尺にある種の密室劇という昨今のアメリカ映画とは思えないストイックさ。しかしそれが功を奏して、非常に緊張感のある一本に仕上がっている。ノーマーク作品だったのだが思わぬ掘り出し物だった。
舞台は死体安置所と火葬場を兼ねた主人公たち家族の自宅・・・ということなんだが、こういう設備が自宅レベルで存在しているというのも広いアメリカならではなんだろうかな。そしてその場所ならではの「検死」という物語の切り口を得た時点でこの作品は7割ぐらい成功が約束されていたのではないか。
一見シンプルに見えるが、その死因の検証というプロセスが視聴者を物語にスッと入り込ませ、小さな違和感からやがて大きな怪異にへと流れるように連れて行ってくれる。おまけに制作側から見れば、余計なセットもCGエフェクトもいらない、語り口ですべてその場の雰囲気が出来上がっていくという、予算にもすごく優しいという、まさに一粒で二度おいしい的なアイディア(笑)。(かといって画面が貧相な感じがまったくしないというのは、かけるべきところにはきちっと予算をかけているるということだろう)
そして方やの解剖される側のジェーン・ドウは徹底して言葉を発することなく、沈黙を貫く。しかしそれは寡黙を意味するのではなく、様々なアプローチで彼女は雄弁にこの世への怨みを叫び続けるわけだ。
繰り返しになるが、作品としては90分という最近の作品にしては短めかつシンプルな作品だが、それだけに思わず見る側がいろいろと想像力を働かせる余地を残してくれているという、このあたりもお手本にしたいような素晴らしさ。
あらゆる面での饒舌さを排除したことで、かえって独特の雰囲気とこの先にあるだろうことにいろいろと含みを持たせることに成功したとても良い一本だったかと思う。
個人的にはぜひこのエンディングの後の「彼女」の行先を見てみたいと思うのだが。
乞う!続編!!
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