昨年末、Amazonのプライムにて。
これも視聴期間が終了とかでたしか一晩で見た―結果、「ガルパンはいいぞ」とまではいかなかったが、話題になるのはなんとなくわかる良作だった。
というかこれ、昨今では少ない正統派のスポコン漫画のバリエーション作品ですな。
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プライムで見れたのはTVシリーズ1シーズンにあたる本編とその特別篇ともいえるアンツィオ戦のOVA。これらTVシリーズ以降のエピソードとなる「劇場版」は見ていない。
おそらく未見の方や世間一般的な理解で行くと、いわゆる萌えアニメ、萌えキャラがウリ的な作品という扱いにされている部分が多いと思うが、あながちその点は間違っていない。
ただし本作がそういった一般的な萌えアニメと異なり、劇場版作品が一年以上も延々と上映され続け、舞台となった茨城県大洗がアニメによる街おこしの模範例として多くのメディアで取り上げられたのにはそれ相当の理由がある。それは端的に言って、昨今珍しい非常にオーソドックスかつ丁寧な作りの作品だったからではないか。
オープニングなどを見るとわらわらと女の子のキャラがこれでもかと並べられているが、主軸となるのは主人公の乗るⅣ号戦車の五名にきっちり絞られているし、その五人のそれぞれのエピソードにサブキャラが絡む形。加えてその各自のエピソードというのがそれぞれの家庭の問題を(重くない程度に)匂わせるもので、そこにスポコン漫画的な「努力」と「友情」がストレートに絡むといった感じ。そしてそれは対戦相手の各校のライバルたちとの試合を通しての友情、ひいては最終エピソードでの西住姉妹の直接対決へと収斂していく。このあたり非常に雑に例えると、萌えキャラの体をつかった『ドカベン』的なテイスト作品といってよいかもしれない。
加えて本作はそういった萌えキャラ的なキャラデザインに騙されがちだが、もう一報の主役たる戦車の描写も手を抜いてない・・・というかこんだけの密度でエンタメ作品で戦車出してくる作品というのは古今東西例がないのでは?
自分はそんなに戦車に関しては詳しいほうではないが、それでもいちおう手元には大日本絵画の名著『ジャーマンタンクス』ぐらいは持ってる人間である。突っ込めるほどの知識は持っていないが、指摘するような明らかな違和感がなかったのも事実だ。そして聞くところによるとその筋の詳しい方々からの大きな突込みもあまりないらしい。そのうえで本編であれだけの種類と数の戦車が所狭しと走り回っている―これは一見ほのぼのアニメに見えても、きちっと手を抜かず・・・というかむしろものっすごい手間かけて作っていることの証左だろう。
そういうかっちりとした作りこみの上で、スタンダードな―というかどこか懐かしい感じの―王道のスポコン漫画的なストーリーが展開する、と。そらこんだけ立てられるフラグ立てまくってたら転ぶ人も多いでしょうなあ(笑)。
※キャラ萌え的なものとは違うかもしれないが、個人的にいちばんいいキャラだなと思ったのはおそらくアメリカモチーフのサンダース大学付属高校(シャーマン戦車の)主将。こういういい意味で深く考えないさわやかキャラは久々のような気がする。あと何気にキャラクター造形がすごくうまいなと思ったのは大洗学園の生徒会長。ある意味このひと理想の上司像だぞ?
ということで、自分的には萌え要素も戦車要素もストーリー的にも―よくできていると関心はしつつも―やや薄味に感じたのではまるところまではいかなかったが、それでも十分楽しめる作品だった。
これならまだ未見の劇場版や、製作が発表された最終章のシリーズも素直に見てみたいと思う。
ちなみに調べてみると、本作の監督水島氏ってすごいヒット作連発の方なのね!?そういうところの「そつなさ」というもの本作のカラーにとっては大きくプラスに働いたのではないだろうか。
昨今は興行的な意味での保険として萌えキャラを配置するのがビジネス的に賢い手法とされているせいか、そういったディティールの部分に目が行きがちだが、本当はそういうあざとい保険をかけずに済むなら夕方に子供向けとしてやってもいい内容の作品のような気もする。(まあ今どきの子供は夕方は塾に行って家にいないそうですが・・・汗)
自分はどちらかというと萌えキャラにはほとんど琴線かきたてられないタイプのひとであるが、そこを忌避していいものを見逃す「精神的な老人」にはなりたくないもの。そういう意味でも本作は見ておいて正解だった。
※ちなみにハード劇画界の第一人者ともいえる池上遼一大先生がすぱーんとガルパンにはまられたのはまだまだ精神的にお若い証拠ということだろう。超一流の人というのはこういう心の柔らかさを持ってるのだ。大いに見習いたいものである。
付記:その1
あー、一点だけ個人的に気になったのは―キャラ萌え的部分が作品の保険でもあるので不可抗力だとは思うのだが―戦車搭乗中の服装だけはもう少し厚着させてやってほしかったな、頭はヘルメット必須、足元はせめてタイツ履くとか。あれ内部がカーボン入れてあって弱装弾だったとしてもあんだけの勢いで走り回ってたら絶対車内の備品でけっこうな怪我するんじゃないかと思ってひやひやする―いや、そこをしないところがフィクションで、それ故に安心してみていられるということでもあるんでしょうけどね(苦笑)。
付記:その2
1/12の戦車ってか・・・ちょっとほしいかも・・・けどきっとでかい、かなり(笑)。
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けど4号戦車ってある意味一番フツーの人がイメージする戦車らしい戦車っぽい外観を持ってるので、これを主役機(?)に持ってきたというのも慧眼だよなあ・・・・・。