これまでのシリーズ(ジョージ・クルーニー主演)はあまり食指が動かなかったので未見だったのだが、本作は女性ばかりのチーム+ケイト・ブランシェット様が出るというのでけっこう気になっていたので先日観にいってきた。
結果、作品としても小気味の良いエンタメ作品で、なによりもお目当てのケイト・ブランシェットがもう超絶カッコ良すぎて悶絶級だった(笑)。とりあえずブランシェット様のお姿みるだけでもお釣りがくるので、未見の方はぜひ見ていただきたい一本(笑)。
ストーリーとしてはこれまでのシリーズの主役ダニー(クルーニー)の妹・デビー(サンドラ・ブロック)が元カレにはめられて収監されていた刑務所を出所するところから始まる。彼女もその家系の”才能”を受け継いでおり、5年の刑務所暮らしの中で完璧な計画を練りに練り上げていた。そしてその計画を実行するために親友のルー(ブランシェット)をはじめ、とびぬけた「才能」をもつ女たちを集め計画を実行する。
細かな点で先によいところをいっておくと、これはこれまでのシリーズもどうやらそうらしいんだけれども、この手の映画にありがちな「派手な銃撃戦」的なものが一切ない。あくまでも練りに練ったプランで勝負する頭脳戦。そしてこのトリック勝負のスリリングさの演出の副産物かもしれないが、音楽やファッション、カット割りといったところが総じてすごくファッショナブル。もちろんこのあたりハリウッド作品なのでヨーロッパ映画のような画面から醸し出されるようなおしゃれ感とはまた違うのだが、最近のベッタベタな大バジェット作品的なところからするとはるかに品がいい。昔はこの手の作品はちらほらあったかと思うんだが、最近では非常に珍しいのではないか。
ストーリー的にも凝ったトリックやハッとさせられるようなギミックはほとんどないのだが、逆にそれがエンタメ作品としては安心してみてられるほどよいバランスの良さ―そう、良くも悪くも肩の凝らない程のよさで、おしゃれに楽しむ娯楽作品としてすごく完成度が高いと思う。こういう欲をかき過ぎないバランスの良さというのを見せられると、なんだかんだいってもハリウッド、その懐の深さよなあ・・・とあらためて感じさせられる。
そして本作はなんといってもそのキャストが目玉。キャリアの長いベテランから新進のサブカルジャンルからの抜粋や、人気のシンガーまで取り揃えている。さらに素晴らしいのがそれがちゃんと適材適所のキャラクター配置で、もともとその人たちの持っているものを活かす形で人物造形されている。この点、ある意味キャラクター映画といってもいい。
当然そういった個性派ばかりということとなると、その核となる主演女優の存在というのは非常に重要なのだが、ここは地道にキャリアを築いてきたサンドラ・ブロック(『スピード』、『ゼログラビティ』etc)を持ってきたのは大正解だと思う。もともとコメディエンヌの指向性が強いそうだが、なんというか非常に「人間としてのまっとうさ」のようなものを感じる女優さんなので、そこが良かったんだと思う。彼女の主演の映画は決して暗くならない印象があるが、そういうとこなんだろう。
個人的には大好きな女優さんであるヘレナ・ボナム=カーターが出ていたのもうれしかった。彼女はティム・バートンの奥さんだったことからもわかるように非常にフリーキーな感じがうまい女優さんなのだが、本作のファッションデザイナー役もそれにぴったりな不器用さ、ある種のオタク臭が出ていて安心する(笑)。
で、そういった「才能」のチームのターゲットとなるのがアン・ハサウェイだが、ここのキャスティングもうまい。アン・ハサウェイはそのきらびやかさゆえかアンチも多い女優さんかと思うが、そこをうまく逆手にとってある種自身のイメージとも被せて「アタマからっぽ」系のゴージャスセレブをどんぴしゃで演じている(そしてそこをラスト近くでひっくり返すシナリオもうまい、このあたりは製作陣のいい配慮)。
そしてそしてそしてですな!
本作のなんといっても一番の見どころはケイト・ブランシェット演じる主人公デビーの片腕ともいえるクールな美女・ルーでありましょう!!
まずなんといってもそのファッションが素晴らしい。’70~’80年代のロックスター(パティ・スミスやデボラ・ハリーetc)を意識したというマニッシュな衣装がめちゃくちゃ似合ってるわけですよコレが!?バーバーリーが全面協力しているらしく当時のイメージをベースにしつつも決してレイドバックだけに終わらない「現代(いま)」のカッコよさとしてちゃんと成立しているのもすごい。で、そんなルーのポジションがまたチームの参謀役というか下士官というか、デビーのプランニングを具体化・実行化させるクールな裏方という感じでここもすこぶるカッコいい。実際に盗みの舞台となるメット・ガラ(NYメトロポリタン美術館の著名なパーティ)のシーンでもひとり厨房で白衣のコック姿で表舞台の全員をバックアップするようなかんじ。ラストに全員がドレスアップしてメットから退出するシーンがあるんだが、あれ?ブランシェット様は?見せ場ないのがひょっとして見せ場?それも納得かな、と思ってたら・・・こんなんずるいわ、カッコよすぎやろ!という登場で〆るという。でおまけに本編終了後の後日譚的なシーンでも一人ライダースーツに身をかため、さっそうとバイクで疾走していくって・・・・・ズルい、カッコよすぎる!!
(一つ確実にいえるのは、日本ではこういういい歳のとり方している女優さんはなかなか出て来にくいだろうということ・・・はあ、カッコよすぎる・・・・・)
ということで後半暴走気味な一文になってしまったが(苦笑)、非常にエンタメとしてバランスのいい、いい意味で頭使わずに楽しめる娯楽映画かと思う。女優陣は華やかだし、ストーリーも小気味よい、ファッションや美術も見ごたえあり。そしてしつこいがこのケイト・ブランシェット様を拝めるというだけで値段ぶんの価値が十二分にある一本である。
まだまだ残暑が厳しいが、暑さを避けるために映画館に逃げ込む場合には、ぜひ見ていただきたい一本である。オススメ!
SMJ (2018-07-25)
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