ひさびさのAimer内製チームのみでのシングル。
ここまでの化け物級(笑)のコンポーザー達とのコラボを経た、いま現在の等身大のAimerチームの姿の良く見えるシングルだと思う。
DefSTAR RECORDS (2014-12-17)
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ゲームとのタイアップ曲(主題歌/挿入歌)であるタイトル曲2曲とそのショートバージョンなどから成る全8トラック。「broKen NIGHT/holLow wORlD」とあるようにこの2曲を中心とした両A面シングル。
非常に良いシングルである。しかし初回に通して聞いた多くの方はそれを認めつつもちょっと物足りなくも感じるのではないだろうか。
これは悪い意味でいうのではなく、それだけ今年のAimerがタイアップしてきた外部アーティストの多さとクオリティの高さが凄まじかったことの証明でもあると思う。
特に澤野弘之、菅野よう子というある意味突出した才能とのコラボのあとでは本シングルが地味目に聞こえるのはある種必然といえるだろう。
正確に把握しているわけではないので確証をもっていうわけではないが、本作はクレジットを見る限りではデビューアルバムからのagehaspringsチームによるもの―ある意味Aimer内製チームによる作品だ。
だからこそ、現時点での素のアーティストとしてのAimerの実力・変化が良くわかる一枚と言えるだろう。
まず明らかに言えるのは、その明確な力強さ。
これまでもパワーバラード的なものは徐々に表に出始めていたが、本作に収録の「holLow wORlD」などは明らかに澤野弘之とのコラボ以降でないと考えられない力強い一曲だろう。英詞というのも良い。
3曲目のOpenTheDoorもリズムの組み立てといい、これまでよりもよりはっきりと洋楽テイストを感じさせる―この方のもっているアメリカンポップス的な感覚をより感じられる。これはこの曲も英詞であるということだけではないだろう。
そして個人的にいちばんすばらしいなと思ったのが(バリエーションを除くと)ラストトラックである「my sweetest one」。
ミドルテンポの1曲だが、曲調といい歌詞といい、どことなく『Unchild』収録の「Because we are tiny in this world」をはじめ澤野作品とのリンクを感じさせる一曲だ。
また歌詞中の「声を聞いてよ」のフレーズは「RE:I AM」の「Please hear me I want to tell you、Please sing to me I wana hear your voice」へのアンサーソング的なものを見てとるのはうがち過ぎだろうが、勝手に想像する分には楽しい(笑)。
ということで良シングルである。
ただし冒頭に書いたように、これまでのコラボが凄過ぎてややかすみがちなシングルでもあるとも言える。
事実アレンジなどでは、いい意味でそういったコラボしてきた化け物級の才能たちのそれと比べると「素直」なアレンジなのだ。
逆にいうと、初めてAimer作品を聴くといった層や、普段あまり音楽を聴かないという層にはいいリードシングルになるとも言える。
ただ個人的には「broKen NIGHT」などトータルとしてはレベルが高いだけに「♪満たされた赤い月~」のセクションなど歌詞の詰め込みが惜しい感じだった。
ここを勇気をもってワンフレーズ分すきまをつくる等していたらもう一段上のレベルになっていたのではないか?と素人なりに愚考する。
しかし「holLow wORlD」等に見られるアグレッシブなサウンドメイキングは、こういった音をもう自分のものとして取り込んで、アーティストとして表現できる幅を大きく成長させていることの証でもある。
前回の『MidnightSun』のレビューでも書いたが、次のフルアルバムあたりが大きな勝負どころだろう。
そういう期待がいろいろと膨らむシングルだった。