bookwalkerにて。今回のセールじゃなくて以前なにかのキャンペーン時に購入して積ん読になってたものを。
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日本海沿岸で大規模演習を展開していた自衛隊だが、その最中、新潟と富山の県境の境川にある臨時の補給物資の集積所に待機していた数十名の隊員たちはその装備とともにタイムスリップに巻き込まれる。彼らはいつの間にか戦国時代へタイムスリップしていた。伊庭義明・三等陸尉たちはそこで出会った長尾景虎に協力し、とりあえずの部隊の安定を図るが、彼らとともに持ち込まれた近代兵器、その威力故に、彼らも否応なしにその戦乱の中に巻き込まれてゆく・・・。
これも確か『魔界転生』とおなじく昔の角川映画でずいぶん昔にやってたよなあ・・・という記憶はあれど、内容そんなにわかりやすくなかったのか、あまり記憶に残ってなかった。
ただ題名だけでそのアイディアの秀逸さ―やったもの勝ちとはいえ―は一発でわかる、加えて何度かリメイクされていたかと思うので、オリジナルを知っておくのもよいか、と思い購入。
で、歴史の知識が増えているいま読んだからか、すんごくわかりやすかった。
要はタイトルから想像できる通り、近代兵器を持ったまま現在の自衛隊が戦国時代へタイムスリップしたらどうなるか?というシミュレーション小説。SF的なアイディアを使ったファンタジー小説とも言える。
この21世紀初頭のトレンドでいくなら何十巻にも微に入り細に入り描写できかねないところを、ほぼ1冊でスパッとまとめているせいもあってか、話の風呂敷の広げ方の割にシンプルに収まっている。
で、この作品がおそらく昨今のそれと違うのは、やはりガチのSF作家が全盛期であったころに書かれただけあって、その作品の広げ方にSF的なマインドならではの制約がかかっているんだなあ、というのがラストのほうで読み取れる。
要は並行宇宙で別の世界線に違う物語が展開しようとしても、時間の流れが持つ慣性のようなものが働いていて、結局歴史は違う人物をもってしても似たような経緯をたどろうとする力が働く、とでも言えばよいか。このあたり、いまの作家や編集者なら話の展開の面白さに淫して、そういった絶対的な軛(くびき)をかけておくことを忌避するだろう。
しかしそれは得てしてその場の面白さだけに終始して、物語全体を貫く重み、というか作劇としての格を損なうことにつながるかと思う。
本作はそういった悪しき商業主義的なところが覆い尽くす前に発表された作品だけあって、そこから巧く逃れられている。
主人公・伊庭義明が、タイムスリップ故に”とき”衆と名乗り、土岐氏へと融合していき、最後はこの時間軸の中においての”あの人物”の役割を果たして炎の中に消える。
昔の角川映画版がどうも印象に残ってないのは、こういったスケールのでかい話なのに2時間ほどの尺に収めるべく例によって換骨奪胎されたからだろうなあ、いやほんとに見たのかすら覚えてないんだけど(苦笑)。
戦国期の歴史的な知識がある程度あったうえで読むなら、なかなか面白い一作だった。
昔の映画版とか見てみるかなあ、おそらく「金返せ!」となりそうだけれど。(苦笑)
それともリメイク版の小説か映画を見てみるべきか・・・。