エンジェル ウォーズ/ザック・スナイダー

標準

当時、劇場で予告をみてそのあまりのB級っぽさに気にはなっていた作品。ネット上のどこかの記事で”叛逆”と絡めて言及されていたので見てみたんだが、期待していなかった分、いい意味で裏切られた。良作だと思う。

エンジェル ウォーズ [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2012-04-25)
売り上げランキング: 8,668


ストーリーとしては、死んだ母が残した遺産を狙う義父が、主人公(ベイビードール)とその妹に襲い掛かる。そのトラブルのさなか、彼女は誤って妹を撃ち殺してしまい、これをもっけの幸いとする義父に精神病院に入れられてしまう。その過酷な環境の中で、彼女はあるビジョンをみる。ここから抜け出すには5つのアイテムが必要だと・・・・・。

精神病院を舞台とすると思いきや、ある種『インセプション』のような夢の多層構造で物語は展開し、その夢のシーンがまさに昨今のゲーム・アニメ文化のそれを―良くも悪くもブレーキ踏まずに―踏襲している。なにしろ主人公がセーラー服に日本刀もって弾丸バラまきながら巨大な武者鎧やドラゴンと戦うわけで(笑)。このあたりが劇場での予告などでも使われていて、みた当時「うっはw」と思った記憶がキョーレツに残っていたので、作品名は覚えていたわけである。

しかし、そのいい意味での開き直りも、ハリウッドならではの蓄積―それは日本のマンガ・アニメ作品のような低予算故の省略の美学ではなく徹底して正攻法なディティールの積み重ね―をもって描写されると、それなりの重さを持つわけで。このあたりは正直話の筋がモロ日本のマンガ・アニメ的なだけに余計に痛感した。(ちなみに主役の女の子たちは事前のトレーニングで100キロ弱のバーベルトレーニングを課せられたとか)

主人公の女の子たちが5人というのも、日本的なそれを感じさせるが、いやまあ彫りが深く、肌のきめの粗いコーカソイドのお姉ちゃんたちにはちょっとこういう役はきついかもねーとも思ったりもするが、骨格しっかりしてないとあんなでかい銃ブン回せませんわ
(肌に関してはわざとテクスチャ足してるっぽい気もしないでもないが、それ抜きにしてもこのあたりの違和感というのは向こうの女性のほうが精神的にも”大人”な故もあるんだろうと思う)

で、話が精神病院からの脱獄だけに終われば「まあこんなアホな映画もいいよな」で終わってたと思うんだけれど、けっこうラストというか、作品のオチがえぐいというか、救いがないというか・・・。
このあたりは日本のそういうサブカルチャーを好む層には受け入れられる暗さのように思う―ただかなり理不尽なので賛否は割れると思うが。

恐らくこの救いのないオチと夢の多層構造というところが、冒頭で書いたまどかの叛逆との接点を感じさせる部分のように思う。

本作では精神病院⇒キャバレーを模した娼館⇒非現実的なゲーム的世界という構造だったが、何気に音楽が重要なウェイトを持たされていて、若干ミュージカル気味なところも叛逆との共通点とも言えるだろう。(劇中でかかるボーカル入りのトラックもかなり良い)

ただ残念ながら、物語の中でキーとなる主人公・ベイビードールの肝心の”ダンスシーン”はうまくぼかしてた。
このあたりをきちっとやってもよかったかと思うが、そうするとファンタジー部分の必然性が落ちる、といったところか。(ちょっと調べてみると、その他ダンスシーンもどうもシュートされてはいたが削られたっぽい)

最後はある種の希望と絶望が交錯するラストだが、ラストのナレーションのベタさも含め個人的にはありかと。

なんにせよ、思わぬ拾いもの的な一本だった。
興味があったが、まだ未見の方はみればそれなりに得るものはあろうかと思う。

コメントを残す