めんどうなので詳細は省くが、双方読んで「やはりそう簡単にはいかんよな~」というのが強く印象に残った。
嘘だらけの日中近現代史 (扶桑社新書) 倉山 満
対中戦略 無益な戦争を回避するために 近藤 大介
総じて言えるのは、中国は上層部に行けばいくほど、その頭の良さ―狡知さ等も当然含む―はずば抜けていて、個人単独の能力としては、到底日本のそれでは及ばないだろう、ということ。
ただ、ここが面白いところ(と言えば語弊がある)なのだが、ではなぜその中国にいまに至るまで日本は完全に圧倒されずに済んでいるのか、ということだが、それは上述の個人のずば抜けた能力というのが発揮されるのが、あくまでもその個人の利益とか周辺のためだけに行使されているからだろうなあ、極論すれば。
よくいわれることだが、中国人の間ではあまり”公(おおやけ)”というものは意識されるものではない―というか、非常に優先順位が低いものなのだろう。
逆にそれと全く正反対とも言えるのが、我が国で(それがいい意味ではなく、単なる同調圧力の延長として存在しているだろうとしても)、それが結果的にここまでなんとかやってこれている理由の一つではないか。
で、繰り返しになるが、中国上層部のエリートというのはほんとうに能力は高い。そこは決してなめてかからない方がいいだろうと思う。しかしだからといって必要以上におびえる必要はない、というのもこの両書は示していてくれる。
特に『嘘だらけの日中近現代史』のほうは扶桑社=産経系である、ということは一応引き算しておいた方が良いとは思うが、これまでの日教組的教科書や朝日新聞的な歴史観から全く想像できない、かつ、非常に理にかなった説明がされているので面白かった。以前読んだ『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤 陽子・著)と一部内容も被るところがあって、その点でも信憑性は高いように思う。なんにせよこういう視点を持っておくというのは重要だと思う。
また本書の中で個人的に強く印象に残ったのは、毛沢東という人物―その悪魔的なまでの恐ろしさ。よくこんな狡知の限りを極めに極めたような人物を相手にできたことよ。(というかバリバリにやられてるわけですが)
一方、最近の日中間の懸案をより政治的な側面から読み解きたい向きには『対中戦略 無益な戦争を回避するために』のほうをお勧めする。
こちらは半年ぐらい前には読み終わってたのだが、さぼって紹介してなかった。これも良い内容なので、興味のある方は一読して損はないと思う。本書の興味深い指摘としては、中国上層部はアメリカはともかく、日本となら軍事衝突するぐらいの覚悟はある、ということ。イギリスとアルゼンチン間で争われたフォークランド紛争的な局地戦は起こりうる、と指摘している点は留意しておくべきだろう。
ただ、PM2.5の問題とか、そういった純粋な政治・経済的な要素以外のものがどう絡んでくるかによって、その辺りの流れは偶発的に変わってくることとは思うが。
(しかし歴代の中国大陸の政権の遷移からすると、どう見ても中共政権はある種の節目に来ているのは間違いなさそうなのよなあ・・・)
なんにせよ、ここしばらくはちょっと油断禁物かと思う。