思ったより刊行ピッチはやくて早くも2巻目。
『わくらばん (2) (電撃コミックスEX) 』
本巻は表紙に新キャラの橙子ちゃんが飾っているが、彼女を含め、各登場人物のエピソードが少しずつ積み重ねられてゆき、それぞれの人物像とかその背景が徐々に見えはじめている。
面白い・・・というかここは意図的かと思うのだが、各登場人物には必ず色を表す一文字がつけられているが、上記のようにそれぞれ個人のエピソードが見えてくる中で、唯一ほとんど描写がない主人公の名前が真白・・・というのも桂作品らしいというかなんというか(苦笑)。
いちおう巻末のおまけ的に彼のエピソード―そして前作『ハニカム』とのリンクを明示する話があるのだが、これとて彼の人格的なものを表すわけではない。
まあこの辺りは、主人公である彼=読者のアバター的な側面もあるので、これはこれでよいと思う。
(あくまで著者にとっては彼は狂言回しであって、あまり思い入れの対象ではないという気配が濃厚だが:笑)
で、今巻を読んで、あらためてなぜ自分は桂作品が好きなのか?その点で「ああ、そういうことなのかも」という発見がひとつあったので書いておく。
それは―基本的に桂作品の登場人物は、どんなに奇矯な振る舞いや、深いコンプレックスを持っていても、根っこのところの人格(パーソナリティ)がすごくまともである―これに尽きるな、と。
作者はよくあとがきなどで「ややこしいキャラクターがいないと思い入れができない」的なことを書いてらっしゃるが、これまで一通り桂作品に目を通してきて感じるのは、その「ややこしさ」というのはどれも至極まともな「ややこしさ」である、ということ。
サイコパス的であるとか、完全に人格が破綻しているとか、そういった「人としてどうしようもない」といったキャラクターは基本的に出てきていないように思う。
なので、そのコンプレックスやややこしさ、というものに対して、一読者として共感できるというか、キャラクターに思い入れができるので楽しく(?)読めるのだろう。
ただ、本巻巻末で登場するもうひとりの新キャラである藍(葵の妹)がちょっとこじらせ気味のサイコちゃんっぽいので、そのあたりどうなる事やら。
しかし、本作は基本的にショートエピソードで構成されるゆるーいある種のラブコメ?である。
自分は掲載誌の週刊アスキーで毎回読んでいるのだが、基本電車で読むとキケンなことが多い―思いっきり吹き出しそうで(笑)。
そういうコミカルさやラブコメ的なにやにやできる側面と、前述のようなそれぞれのもつややこしさという部分を、違和感なく―それも毎週4ページに落として込んでいる、というのはかなり非凡なことだと思う。凄いなあ・・・。
また単行本巻末エピソードは今後も『ハニカム』とリンク気味にいくっぽいので、これはこれでしばらく目が離せない感じになりそう。
実は毎週週アスをいそいそと買いに行っている理由の半分は、実は本作が読みたいから、というのはここだけのヒミツな?(笑)
※巻末エピソードは個人的にお気に入りの鐘成さんが、ハニカムのころより少し健康的なふっくら感があって少し安心した(笑)。
※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正