日本を喰い尽すタガメ女の正体/深尾葉子

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悪い本ではなかったが、自分的には若干浅く感じた。

日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体 (講談社プラスアルファ新書)
深尾 葉子 (著)


最近、景気の不透明さのせいもあって、あるアンケートだと女性の専業主婦願望への回帰傾向が見られる、という報道を目にされることもあると思うが、本書はまさにそういった事情の背景にあるものを裏書している一冊だろう。

曰く、パートナーとなる男を数々の約束―箍(たが)で縛り、その男のサラリーや社会的なリソースを吸い尽くす。
箍で縛るが故に「箍女(タガメ)」、捕食されるが故に「カエル男」。
その歪さの根底にあるのはなにか?ということを問い掛けている一冊である。
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人間の基本/曽野綾子

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この方の著作―といってもほとんどエッセイのほうだが―は一時期よく読んでいたが、しばらくご無沙汰だった。
久しぶりに読みたくなって。

人間の基本 (新潮新書) [単行本]
曽野 綾子 (著)

奥付に2012年3月とあるので、震災の1年後、それを意識して出版されたものだろうと思しい一冊。
「人間の基本」との表題にあるように、数々の経験を経て感じた、著者の人間観を語った一冊。
文体からおそらく語りおろし的な一冊だと思われる。


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英国一家、日本を食べる/マイケル・ブース

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紀伊國屋書店で平積みになってたのをぱらりと立ち読みしたのが運のつき(笑)。序章半ばぐらいまで読んで
「いかん、これは買わねば」
とレジへ直行(苦笑)。

英国一家、日本を食べる [単行本(ソフトカバー)]
マイケル・ブース (著), 寺西 のぶ子 (翻訳)


英国フードジャーナリストの著者は、長年の友人、口の悪い日本人・トシに「お前は日本料理をわかっていない」と長年いわれ続けてきた。しかしそのトシが彼に一冊の本を渡す―。その日のうちに著者は「日本へ行かねばならない」という決心のようなものが出来上がっていた。取材には長期間かけたい、そう思いつつ妻に相談すると彼女は「子供たちも連れて行くといいわね、きっと一生の思い出になるわ」いや、ちょっと待って、そういうつもりじゃ・・・と思っている著者をよそに、一家全員での日本滞在が幕を開けた。



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なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?

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才気ある人が、修羅場をくぐってもなお優しさと希望を捨てないと、こういう本になるのか。

なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか? [単行本(ソフトカバー)]
山口 揚平 (著)

いわゆる経済・金融系のHowto本ではなく、お金というものや、実体経済からおおきく乖離した金融資本主義経済が幅をきかすいまの世の中で、お金の本質―ひいてはその先にあるものがなんなのか?ということを考察した一冊。

著者の前著が素晴らしかったので読んでみたのだが、これも良い本だった。
各論のなかにあるものそれぞれを通して、より明確に著者の思想というか、ものの考え方を論じている一冊ともいえる。
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「検閲の基準 ―発禁になった本、ならなかった本―」/千代田区立図書館展示

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twitterでどなたかの発言で出ており、別件ついでにいってみた。
「検閲の基準 ―発禁になった本、ならなかった本―」




内容自体は、図書館の展示スペースの壁面を1面とガラス展示台からなるミニマムなもの。
おもに明治以後~戦後GHQに解体されるまでの内務省委託本(法律で献本が義務付けられている)をメインに、担当者がどう検閲を行っていたのか?というところをまとめている。

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コミュニケーションは、要らない/押井守

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昨年の3月、震災から1年をむかえた頃に出版されていた一冊。

コミュニケーションは、要らない (幻冬舎新書) [新書]
押井 守 (著)



国内よりも、むしろ海外の玄人筋に人気のあるアニメーション映画の監督であり、”安保”に乗り遅れた元左翼として自身の出自を自覚的に語ることの多い、押井監督による震災や原発―その前後の日本の言論空間の空疎さを指摘した一冊。

本書の中で監督は、あえて意図的に「僕は原発推進派である」との命題を設定して、論を展開している。
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