それでもなお、人を愛しなさい―逆説の十か条

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邦題だと非常にウエットに見えるが、原題である『The Paradoxical Commandments – Finding Personal Meaning in a Crazy World』のほうが若干重みを感じられていいな。

それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条


いわゆる欧米型の処世訓本の一冊かと思うんだけれども、原著原題にあるように「この狂った世界」という認識を前提としているのが興味深い。

そしていわゆる現世利益的な”成功”ではなく、その個人が、自身の人生においてどうやれば”意味”を見出せるのか?―そのことについて考察した一冊。

具体的にはその10か条にそって、そのそれぞれを具体例をもって解題している。
シンプル、かつあまりくどくなっていないのがよい。

ここに書いてあることを褒めちぎることも、馬鹿にするのも、するだけなら簡単だ。
要は、ひとはその自分の背丈にあったカタチでしか物事を見ることが出来ない。

あとは、そこからどれだけのものを引き出そうとするのか否か。
ただそれだけだ。

自分には、含蓄深いものがある言葉だと感じられた。

言うは易く、行うは難し―。



1・人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。
  それでもなお、人を愛しなさい。

2・何か良いことをすれば、
  隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。
  それでもなお、良いことをしなさい。

3・成功すれば、うその友だちと本物の敵を得ることになる。
  それでもなお、成功しなさい。

4・今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。
  それでもなお、良いことをしなさい。

5・正直で素直なあり方はあなたを無防備にするだろう。
  それでもなお、正直で率直なあなたでいなさい。

6・最大の考えをもった最も大きな男女は、
  最小の心をもった最も小さな男女によって撃ち落されるかもしれない。
  それでもなお、大きな考えを持ちなさい

7・人は弱者をひいきにはするが、勝者の後にしかついていかない。
  それでもなお、弱者のために戦いなさい。

8・何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。
  それでもなお、築きあげなさい。

9・人が本当に助けを必要としていても、
  実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。
  それでもなお、人を助けなさい。
 
10・世界のために最善を尽くしても、
  その見返りにひどい仕打ちを受けるかもしれない。
  それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。






※冒頭のamazonのリンクは自分の買った旧版のもの。現在は新判が出ているようだ。

「ガンダム」の家族論/富野由悠季

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結果的に富野監督2連荘になっちゃったな。

「ガンダム」の家族論 (ワニブックスPLUS新書)

著作を調べていて、監督には珍しく新書体での出版、かつ「家族論」とついていたので、amazonで速攻注文。

前々から富野監督作品には、濃厚に「家族」とか「家庭」の在り方―それもどちらかというと「親子関係」にウェイトを置いた作品が多いと思っていた。
(ご本人も本書で「そればかりではなかったのだが」と仰ってるが、やはり圧倒的に多いと思う)

で、その通奏低音のように語られてきたテーマを「家族論」と名打って一冊にしているとあらば、読まずばなるまい。
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富野由悠季対談集 Ⅰ

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以前『教えてください、富野です』というムック形式で発売されていたものの再編集版。

ガンダム世代への提言 富野由悠季対談集 


角川の『ガンダムエース』誌で連載されていたものということだが、前著の24人に加え新たに8人追加。
加えて3ヶ月連続刊行とのことで、その第1集目にあたる。

前著も買っていたけれど、増補追加分に日野先生て、なんというオレ得w
あと前回読んだときにも「良かった」こと自体は記憶していたが、内容的には失念していた山折哲雄氏が、最近自力で見つけ出して買っていた、司馬遼太郎の対談著作の相手だったということにいまさらながら気付いてびっくり。

というか、ここで対談の相手に取り上げられている人々や内容というのが、まったく古くなっていないどころか、まさに今現在のこの2011においても、先を見越した内容ばかりというのに心底驚く。

監督、どこまで見越してらっしゃるんですか!?という。

とにかくすごい内容、というかこの先三十年ぐらいをどう生きるか?ということを考えるための、思想マッピングガイドとでもいえる一冊。

二十代は言うに及ばず、三十台以降の人も必読だろう―というかその人たちこそ絶対読んでおくべき必読の書だと思う。

いやー、このアンテナ・臭覚―。

ほんとすごいわ・・・。

自由をつくる自在に生きる

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思っていた内容とは若干違っていたが面白い本でした。

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

意識せずに購入したが、『スカイ・クロラ』の森博嗣氏だったんだね。
著作はこれまで読んだことはなかったんだが、気になる名前ではあった。

要は自由とはなにか?という自由論の一冊だと思うんだが、本書にもあるように要は「自在であれること」ということだと思う。

好き放題、やり放題、というのは一見自由に見えるかもしれないがそうではない。

いかに自分の意志の通りに振舞えるか、そしてその自分の意志どおりに振舞うことを阻んでいるものはなにか?という、そのことに関する考察の一冊といって良いだろう。

熟読した、というほど読み込めていないので、詳述することは避けるが、肯定でも否定でもない「支配」の概念などは凄く参考になった。

日々、自分の生活の中に転がる種々の「支配」的なものから、どう自分を開放してやれるか、結果どれだけ自在にふるまえるか、ということだろう。

あとこの方が建築系の大学関係者で四十以降で作家デビューだというのは初めて知った、びっくり。
ただ読んでいて、もの凄く右脳の働きのよいタイプの方のような印象を受けた。

それでいてロジカルに文章を組み立てられる―いやだかからこそか、通常の意味でなく、数学的なイメージに近いロジカルさを感じたので―というのは素晴らしいと思う。

ここに一部書かれていたようなことは、自分も二十代の頃からずーっと考えていて「どうやったら自分自身でかけているリミッターの部分をむりせずはずせるのか?」というのはいまも課題。

それに関する質のよいヒントはもらえたような気がする。

そう、ここにも書かれているように、案外自分で自分に制限をかけていることって多いんだよね。
それをどうはずし”自在”を手に入れるか。

精神論だけでなく、仕組みや仕掛けをうまく使って良く必要もあるんだよな。

専門家とはこういう人のことを言うのではないのか?

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公論を語るとき、論者の信憑性を計る一つの物差しは自らの不利益を享受してでも、成すべきことは成す人かどうか、というのはいってもいいと思う。

あとは自分で見て判断してください。

自分は、こういう方こそが”専門家”だと思う。
法律を破ることになっても、自分の専門性に殉じたということだろう。

正しく知り、正しく認識できている”専門家”だからこそ「正しく怒る」ことが出来るのだ。

そして世の中で”正しく知る”ことの出来る物事の範囲というのはもの凄く少ない。
それを自覚したとき、すくなくともそこには謙虚さが生まれるはずである。

巷間にあふれる、自説のヒステリックで恣意的な開陳など、意見でも怒りでもなんでもない―。

これは見ておいたほうがいい

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長い。けどこれは見ておいたほうがいい。

groove japan

クラブソニックいわき でのトーク from groove japan on Vimeo.

特に家族を持って、子供を持っている家庭の人は絶対見ておいたほうがいい。

長いのでラジオ代わりに音だけ流すとかでもいいと思う。

最初はもっと胡散臭いのかな、現実論だけを語る人なのかな、と話半分で聞いていたが、厳しい現実を冷静に押さえた上で、あえて希望を語ろうとしている。

「けどそれって現実的じゃないよね」とかニヒってる態度がさもクレバーかのように勘違いしているアホどもと違って、この厳しい現実を踏まえ、それでも希望を捨てず、語っていこうとするのは凄いと思う。

自分の持ってる漠然とした認識の甘さの部分も良くわかった。

というか、本来はこれぐらいのパワーを持って、それぞれの論者は自分たちの論を語らないといけないはずなんだよね。

人ならではの小さい弱さも、だけど希望を見ようとする善性の部分も、その混沌全てひっくるめて人間だ、という認識がないといけないと改めて感じた。

見て、聞いてみて、自分のなかに生まれたモヤっとしたもの―それを大切に。

それぞれの、そのモヤっとしたものがきっと”この先”を生きていくための大きなヒントになると思う。