【レビュー】本来胃が痛くなるぐらいで”ちょうど”なんだが―(『ウルフガイ 8巻』)

標準

平井和正の代表作、ウルフガイシリーズのコミック版最新刊。
原作でいうところの第一巻『狼の紋章』の終盤部分に入っている。

『ウルフガイ 8』 (ヤングチャンピオンコミックス)



表紙にあるように青鹿先生がエライ目にあわされてしまうシーケンスですな。

掲載誌をコンビニでチェックはしていてちょっと周りを気にしなければいけないような描写の連続ではあるんだけれども、通しで読むとちゃんとストーリーを損なわず、必然性を持って描かれているのでほっとした。

原作では影の薄い脇役・田所先生がちゃんと存在感出しているところもよい。

ただ一点、ここになって惜しいと思えるのがやっぱり犬神明と青鹿先生の精神的なつながりの部分の描写がまだ足りてなかったのかな、というところ。

これは実は原作でもそういうフシがなくはないんだが、原作での名シーンである、拉致された先生の小さなアパートに残されたカーディガンを見て犬神明の心が決まるところは残しておいてほしかった。

ただしその代わりといってはなんだがなんだが羽黒の凶悪さは原作の何倍もブーストアップしているのでそこはヨシ。

まあこういう暴行のシーンって昨今のマンガはしれっと載せてるが、本来こういう描写は読んでる読者の胃が痛くなるぐらいでちょうどなんだよね。

そういう意味ではほんとうの意味での暴力性、人の尊厳を破壊する、あざ笑うという意味ではまだベルセルクの13巻には遠く及ばない。
(この点、暴力性―という点では前々巻の千葉への暴行のほうがえげつなかった)

所詮フィクションだといってしまえばそれまでだが、暴力は暴力として徹底して描かないと。

でないとそれをファンタジーと解釈してしまうバカがまたぞろ沸いてくる。
ただ逆にいうと日本のこういうコミック文化はそういった暴力を本当の意味としての暴力として描けるところにまできているということではあると思う。

そして人間―ホモ・サピエンスという種のどうしようもない暴力性・暴虐性への告発がこのウルフガイシリーズのテーマのひとつでもある。

あと・・・2,3巻で『狼の紋章』のセクションは終了のはず。
以降、いよいよ本編。













※2022/06 標題の表記を統一、リンク修正

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