『レディ・イン・ザ・ウォーター』

標準

月極めレンタルで。
『シックス・センス』等の、M・ナイト・シャラマン監督作品。
公開当時賛否両論真っ二つだったというのも納得。

レディ・イン・ザ・ウォーター


むかしむかし、水の精と人間たちは、隣り合って仲良く暮らしていた。
しかし人間たちは、いつしか水辺を離れ、欲望のままに争いの道を歩んでいた。
かつて離れ離れになった水の精たちは、いままた人間たちを救うため、命がけで人間の世界にやってきていた・・・。

そんな感じのオープニングからはじまる、一種のおとぎばなし―bedtimestoryだ。

そういったところを頭に入れずに見てしまうと、確かに駄作にも取れなくもないと思う。

しかし個人的にはこの手の作品は「あり」-。


なによりすごいと思ったのが、こういう大人の目から見ると、荒唐無稽にも見える話を、ちゃんと物語に引き込んだ上で、最後まで見せきる演出力。

ディティールが突飛なだけに、そこが余計にすごい。

またストーリーとしても、小さな世界の普通の人たちが―それも、それぞれの役割と使命を持って―世界を救う、そういう等身大の救世の物語というのもいい。

その軸となるのが、過去に心に深い傷を負い、それでもなお誠実に生きようとする、中年のおっさんである、というのがまた素敵だ。

最近何かで英語の「I Love You」というのは、日本語の「愛してる」と違って、もっと全人的なものへ向けられたものだ、というのを読んだ記憶があるが、このさえない容貌と、深い傷を二つして持った主人公だからこそ、終盤でのその言葉に、ナーフ(水の精)は蘇るのだろう。

また、インド人と思しき作家のたまごの青年もいい。

彼もまた、ナーフに聞かされた自らの衝撃的な未来を、動じることなく、自らの運命として受け入れる。その静かな、受容の姿が美しい。

そうじて「おとぎばなし」だから、ということもあると思うが、出てくる全員が、ほぼ善人として描かれているのもいい。これもアメリカ映画としては非常に珍しいだろう。
(インド出身であるシャラマン監督故だろう)

個人的にすこし「もったいない」と思ったのは、最後の守護聖獣的な猿の姿の妖獣。
姿をやや見せすぎ―というか、見せるならもう少しデザインは考えたほうが良かったかもしれん。

ただ、けっこうビジュアルは考えてあるとは思う。

なによりあの主演女優さん(ブライス・ダラス・ハワード)のビジュアルの作りこみは絶妙のバランスだろう。
(調べたらT4のケイト・コナーもやってるの!?ひーっ、画的に違いすぎるw)

冒頭のタイポグラフィ的なグラフィックもかわいらしくて素敵だ。

ある種、感染魔法とか、ビブリオマンシーとか、あのあたりの感覚を理解できる人には、すごくしっくりくる映画だろうと思う。
(最後に大鷲が迎えに来る、というのもなんとなくネイティブアメリカン的なものを感じる)

個人的には「大人向けのおとぎばなし」ということで、非常に楽しめた一本でした。

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