【レビュー】『ディザインド 1巻』木葉功一

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発売時に購入済だったんだが、そのあとばたばたしてて取り上げてなかったので、この機会に。

『ィザインド(1) (シリウスコミックス)』




『キリコ』『クリオの男』『セツ』等の木葉氏の最新作。

今回の主役はフリーランスのビデオカメラマン。
高額な報酬と引き換えに、どんな実現不可能な状況でさえもそのカメラに収めるという「虎髪(とらがみ)明」が主人公。

『キリコ』の遊佐朗以来のタフガイ系の主人公で、『キリコ』を愛読されてた諸兄には来た来た感あるんじゃないだろうか(笑)。

ただし、本作の主人公が手にするのは銃ではなくビデオカメラ。

そのあたりに、『セツ』を経た木葉氏の作家としてのいい意味での変化が見てとれる、と思うのはファンの贔屓目か(苦笑)。

そういった部分の変化を伴いつつも、本作は木葉作品の特徴―たぶん当代のマンガ作品のなかでも一二を争う”スピード感”がよりはっきり出ている作品で、ある意味木葉作品の”王道”になる可能性もあると思う。

またカメラマン、という人物を主人公に選んでいる点や、本巻に収録されているエピソードからも、社会悪的な部分を暴く、といったところからも、氏の志向性がよりはっきり出る可能性を持っている一作だと思う。

巻末の次巻予告見ると『セツ』と同じ時間軸の作品でもあるようなので、そのあたりのクロスフェードも楽しみだ。

ただ一点だけ懸念があるとすれば、本作そのものの話ではないが『セツ』のほう。

この『ディザインド』では思う存分木葉節を炸裂させてほしい、と思うのだが、できれば『セツ』のほうはそういう大所高所からの社会悪的なものとの対決よりも、普通の人々が普通ゆえにもつ、身近なちいさな弱さを丁寧に拾っていってほしいと思う。

それぐらい『セツ』のほうで見せて頂いた、氏の作家としての変化というのは重要で、素晴らしいものだと思うからだ。


twitterで何度かやり取りもさせていただいたのだが、作品から受ける印象の通りの熱い、しかしユーモアのセンスのある方である。

もちろん、その世界の捉え方に自分との相違もあるのだが、基本、作品から受ける印象からも”信頼できる”作家さんである、というのは間違いない。その点は断言する。

作家として信頼したら、読者は黙々とその作品読めばよいのだ(笑)。

作家と愛読者というものはそういうもんだ、と教わったのはこれまた敬愛するかの平井和正御大の一文からだった。

で、本作の主人公が「虎髪」明というのが、偶然だったのかもしれないが、なにか感じるものがあるよねえ、自分としては(笑)。


だって平井御大の代表作の一つ、ウルフガイシリーズの主人公の名前は―








※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

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