ティムバートンの世界/森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)

標準

シザーハンズにノックアウトされて以来、バートン先生は大好きな映像作家。
個展が開催されるとあらば行かずばなるまい!とめずらしく意気込んで前売りチケットまで買ってたので観に行ってきた。

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会場はなんだかんだで、この手のイベントでは良く足を運ぶことになった六本木ヒルズ。
しかし今回はいつも見てた展示のつもりでいってみると、例のエスカレータであがるほうの会場(森美術館)ではなく、その脇から入る森アーツセンターギャラリーのほうだった。
こちらに入るのは実は初めてだったんだけど、こちらのほうが若干スペースとして小さめなのかな。
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混雑するであろうことを予測して平日昼間に時間を作っていったわけだが、ある意味正解。
混雑的にはさほどでもなかったんだが、前述の会場スペースの広さが災いして、けっこう観客の導線が錯綜してる=混雑してる感じになる。

これはひとつには決まった順路設定しておらず自由鑑賞だったからだろうな。
バートンという人の作家性を考えると、その精神は正しくて、できればめいめい自由に観てほしい・・・というところだったかと思うんだが、ひとつ忘れてないか、そう、バートン先生の人気ということを

しかしそれでも時間帯を選んだおかげもあって、並んでもぎゅうぎゅうづめで少しも見えないということはなく、混んでるなりに十分楽しめた。

というよりかもう・・・紙ナプキンにかかれた一見落書き風にみえるイラストがわーっと並んでる、そしてそのひとつひとつにあの独特のユーモラスさと不気味さがにじみ出てて、もうとっぱなからニヤニヤが止まらない(笑)。

いやもう、なんというかあの描線独特のひょうひょうとした中で描かれるキモかわいさ、そしてそこはかとなく漂う物悲しさ・・・たまりませんわ。

特に前半でいちばんぐっときたのがグッズにもなっていたが、ひとり下を向いているフリークスな感じの少年に、くまのぬいぐるみ?が差しだされている一枚。
こういうのには弱いのよ・・・。よっぽどグッズ買おうかと思ったけど、使い道がないだろうな、と自分に言い聞かせてがまんしましたよ。

で、そうじて直筆のものはこういったラフな素材からカチッとしたイラスト作品まで各種展示されていたんだけれども、どちらかというとカチッとした体裁を取った作品よりも、立体物やオブジェなど、いちど他のメディアにコンバートされたもののほうがよりその魅力が発揮されるように感じた。ある意味アニメーションや映像作品もそういう”コンバートされた”ものだよね。

特に模型を作ることが好きな自分としてはコープスブライドの骸骨軍団や、フランケンウィニーかな?のバートン版ガメラ(違)、風車のガジェットや深海魚を彷彿とさせる職種と目玉のお化けなど、心奪われるものばかりだった。

そして映画監督なだけあって、映像作品の展示もいくつかあった。
ただ、この手のイベントでのそれは必ず混雑すること必定で、じつは自分はあまり好きな展示方法ではないんだけれども、今回はいちおう尺の長いバートン版ヘンゼルとグレーテルは観てみた。
これもなかなか毒の効いた演出で、グリムや日本の昔話にもあるような残虐性も見え隠れして「ああ、この人の作品はある意味そういった物語世界の直系の子孫なのかもなあ」と思ってみたり。
またこの作品はおなじ童話・児童文学的な作風を内包する宮崎駿監督のそれと非常におもしろい対比を見てとれて、個人的には見れてすごく正解だった。

で、おそらくウィノナライダーがつるっぱげでローソクたててるPV映像らしきものは残念ながらすっとばし、久々に再会したステンボーイを一本だけ見て、ポラロイドによるポートレートのコーナーに。

すごいのは写真というジャンルでもちゃんと色味というか、色彩設計でちゃんと作家性が浮き出ているということ。
プロというか、真のアーティストというのはこういうもんなんだなあ・・・。

で、最後のコーナーのタイトルがバートン作品のテーマとも言える『誤解されがちなアウトサイダー』。
ここではそれに関連する作品が展示されていたが、語るまでもないよね、そこがティムバートンという作家の最大の魅力であり、その作品の骨子の一つだと思う。

要はアウトサイダー・・・というかもっとぶっちゃけ言ってしまうと、それはフリークスであるが故の孤独であって、その醜い外見の中に輝く繊細で無垢な魂が見え隠れする、その魅力であり、フリークス故にそのすぐそばに控えているタナトス=死の臭い、そこに日常に縛られている我々は、なにがしらかのえもいえぬ吸引力を感じるんだろうなあ。
(このフリークス的なものに関するものの魅力というか吸引力、というのは後日時間があれば考察してみたいところ)

そしてここを最後に展示は終了。
確か最後に直筆のペイントアートが大きく壁に描かれていて、我々を送り出してくれる。

そのあとは恒例・悪魔のお土産コーナーですなw
ええ、我慢して買いませんでしたよ!?けど作品集のフル版・・・ちょっとほしいな・・・。

ここで前売り購入時に本展のカタログも同時購入のチケットを買っていたので引換券を出してカタログをもらう。
最初エントランスでチケットから引換券に変えてもらってたのコロっと忘れててひそかにあわててたのはヒミツな?
(思い込んでると手元に持ってるチケットがそれとすら気付かないのですよ、トホホ・・・)

なんにしろどっぷりとバートン独特のあの世界にひたれて幸せな時間でした。
最初は軽く小一時間ぐらいで見て回れるかなと思ってたらなんのなんの二時間強がっつり見てしまってましたわw

なんだかんだいって会期ももう半ばを回って、正月早々に終了する本展、興味のある方はぜひ早めに脚を運ばれることをお勧めする。

いや~幸せだったあ・・・。


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