発売日からやや遅れ気味だがレビューしておく。当初の目的だったドラゴンとの対決はきれいに本巻にて終了。とはいえこれだけの人気作品なのでここで終わることなく次への展開へと進む模様。ま、当然ですな。
『ダンジョン飯 4巻 <ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ))』
本巻ではライオスの妹・ファリンを飲み込んだ例のレッドドラゴンとの対決でほぼ一冊費やしている。一冊費やしたと書いたが、ちまたにはびこるRPG作品とかであればこのあたりとても一冊で終わらせることなく下手すると2巻3巻と使って尺を稼ぐとこだろう。しかし本作品はそんな下品なことをせずスパッと一冊の中で収めているのがすこぶる好印象。もともといわゆる「理数系ギャグ」系統の感性をお持ちの作家さんと個人的には見ているので、そこから考えると当然の構成といえるかもしれない。
とはいえそのレッドドラゴン戦もあっさり描いているわけではなく、パーティーのメンバーそれぞれ下手すると死亡一歩手前というリスクを冒しての一戦なのでちゃんと読みごたえがある。これまでその浮世離れっぷりが飛びぬけていたセンシもその状況判断の的確さと肝の太さで、モンスターゲテモノ食いオタクのライオスも自分の足を犠牲にすることまで計算に入れた戦術で、両者ともこれまでのイメージをやや一新(苦笑)、それぞれへたなRPG作品キャラよりはるかにカッコよく見える。
(イメージ一新というか、本来持っていた「プロ」の部分がようやく描写されたというべきか)
そしてここからまた一波乱なのが妹・ファリンの救出劇。ここはあえて詳細は書かないでおくが、ここまで徹底してシビアに(けど重苦しくはなく)犠牲者救出劇をやったというのは、本作が非凡な作品であるということを改めて証明したように思う(けど例の「成分表」ついてたのはどうかと思うがwカルシュウム100%とかwww)
で、その蘇生劇で大活躍なのがドジっ子・マルシルちゃんなわけですが、これまたなんとも今後に含みを残しそうな手法・・・。大丈夫かこれ、たぶん大丈夫じゃないんだろうけど(苦笑)。
そして戻ってきたファリンはやはりあの兄の妹でした・・・。
なんにせよこのあたりまで読んで感じたのは、使い古された世界や舞台(ファンタジーRPG的な世界観)でも、きちっと現実のディティールを端折らずに落とし込んでやれば、これだけ活き活きとした作品になりうるということ。その点考えてみればこの『ダンジョン飯』というタイトルをつけた時点で―生きていくため一番必要な「食事」をあの世界ではどうしているのかを丁寧にさぼらず描写することは必然だったわけで―この成功は約束されていたといってもいいのかもしれない。
本巻である意味一番最初の目的は達成されたことになるが、以降の展開への伏線もいろいろと張られている。特に巻冒頭の地上の街や酒保の描写はそのあたりを展開しつつも作品世界のディティールを埋めていくという非常に巧さを感じる。このあたりほんと素晴らしい。
ライオスたち一行はこれから今度は来た道を戻る帰路の旅路を行かなければならないわけだが、このあたりを端折らなさそうだというのは、上記に描いたようなことからも想像できる。
当たり前のことを端折らずに丁寧に描くこと、そしてそれをちゃんと必然性をもって描くこと。
そりゃ面白くないわけがないですわな。
次巻以降の展開は正直いまのところあまり読めないが、次はどう来るのか楽しみに待ちたいと思う。