yahooみてたらGyaoで無料配信中だったので見てみた。
いまのテレビ視聴手段のない我が家の環境では貴重な時代劇(苦笑)、堪能させていただきました。
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藤沢周平の原作は読んでいて、秘剣の名前は覚えていたんだけれども物語のディティールはいい具合に忘れていたので楽しく見れた。
最初藤沢作品の映画なのでまた山田洋二監督かな~とか思って見てるとけっこうハードボイルドな描写出てくるのでこれは違うか?と思ったらやはり別の監督の模様。
しかしそのおかげか、そのハードボイルドな部分が藤沢作品の持つ暗い部分の魅力をより際立たせていて、この演出は正解だったと思う。
主演の豊川悦司もよい。一部調べてみると当時は不評らしかったヒロインの池脇千鶴も悪くない。
ただ、原作にもあり、ストーリー上も必要ではある濡場のシーンはそこまでを比較的ストイックに演出を積み上げてきただけに一気に生臭くなったのは少しもったいなかったかな。(このあたりは原作のほうがある種の納得いく理不尽さというか切実感があって個人的にはそちらに軍配が上がる)
本作は最後の吉川晃司との対決からはじまるラストの長い殺陣のシーンが見所ではあるが、血糊の派手さに対して、若干周りを囲む手勢の攻め口の演出がぬるいようにも思われる。
これもストーリー上仕方ないとはいえ、周りが躊躇しているという部分の見せ方はもう少しやりようがあったんじゃないかな。本作の演出では「士道不覚悟」と責められても仕方ないような気がする。
(理不尽な命令でも腹くくるのが刀を権威の象徴として持たされた侍の宿命だからして)
とはいえ、ラストは非常にすっきりするというかそれがなけりゃ嘘よな、という感じでちゃんと落とし前はつけている。
このあたりは原作の藤沢作品読みなれている方には比較的ティピカルなプロットなのでご想像がつくだろう。
ただ人によっては一人残された池脇千鶴の立場をおもって理不尽とは感じるかもしれない。
しかしそのあたりの理不尽さがいわば藤沢周平の書こうとした武士の悲哀というか、厳しい現実を生きざるを得ない者たちへのまなざしと言おうか。
見て損のない、質実な作りの佳作である。ただそれだけにあと一歩の部分が正直惜しいとも感じる作品であった。
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