【レビュー】『リーチマン 3巻』米田達郎

標準

意外に早かったが、本巻にて残念ながらいったん完結の模様。

『リーチマン(3)< 完>』



嫁の妊娠がわかりあたふたする主人公をよそに、意外なほど腹の据わっている当の嫁。夜中にこっそり土方で稼ぐも「フィギュアも作らんと何ほっつき歩いてんの!」お金のことはわたしがちゃんと考えてますとしかられる始末。そんな中、意中の人に悶々とする友人タナベ氏の面倒を見たり、震災でなくなった友人・伊藤君の彼女のサキちゃんが不安定だったり、それでも日々は刻々と進んでゆく。造型師になる夢は道半ばなれど、主人公はその腕についに我が子を抱く―全三巻、これにて完結。




前巻のレビューで、今この時代の空気を切り取っている感じがよい的な評価をしたと思うが、基本的にその評価は変わらない。
本巻では、「主夫」という立場の世間との軋轢というこれまでの流れに加えて、嫁妊娠判明→出産までというのが一つのピークをなして、結果作品としてもいったん終了となった。

個別のエピソードとしても、本巻冒頭の嫁の祖父母のところへ訪ねていく話や、震災でなくなった伊藤君の彼女のエピソードなどいいエピソードが並ぶ。
(読書家の嫁のおじいさんの「パン屋に小麦粉がたくさんあっても不思議じゃないでしょ」―このセリフが素晴らしい)

特に後者は、嫁の出産と並んで、本作品の作品としてのピークの一つを作り上げているといっていいだろう。

個人的には、こういった同時代性を持った作品、というのは後々非常に重要性をもつと思っていたので、できればもう少し続いていてほしかったところだが、話の流れ的にここでいったん区切る、というのは作品的には正解だと思う。

そして本巻読んであらためて思うのは、主人公の嫁さんがすごい男前で、最高にいい嫁だなあ、ということ。

昨今、主婦願望の二十代女性が多いとの報道もあったが、たぶんそういう子たちは、このご夫婦のような「夫婦であること」の醍醐味を味わうことは出来ないのではないか。

男だから稼ぐ、女だから家を守る―そいうステレオタイプでなく、「夫婦」だからこそ、互いが出来ることで助け合って生きていく。

そういう意味で、二人とも相手を信頼している―だからこそ自由で楽しく二人で生きていくことが出来るのだろうと思う。


本作品はここで完結となるが、このあとこの米田氏が雑誌媒体で作品を発表する予定があるのか不明だ。
が、自分としては、是非次の作品も読んでみたい。

※どうもFacebookで連載的なことをされているそうだが、ご存知のようにワシャFacebookあまり信頼してないのよ(苦笑)―媒体だけなんとかしてくれんかな~?

細かなディティールはフィクション入っているだろうが、基本、家族を持たれて嫁さんと三人での生活されているとのことかと思う。

是非このご家族にたくさんの幸せがありますように―とささやかながらお祈りして、完結のお祝いとしたいと思う。







※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

コメントを残す