最近読んだ本

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勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)


ジャーナリスト・江川 紹子氏による中高生向けに書かれたと思われる「勇気」について考えた一冊。

これまでなんらかの事件や事象で社会的にスポットの当たった人たちへのインタビューを通して「勇気とは何か」について考えるという体裁をとっている。

総じて良い仕事の一冊だと思うのだが、若干「左」よりのバイアスというかミス・リーディングにつながるような部分がなきにしもあらずな気がするのが残念。
(まあある意味「左」の総本山・岩波書店から出ているので当然といえば当然か)

もちろん江川氏のことなのでそのあたりは当然取材したうえで書いているとは思うが、自分の認識とは少しことなっていた―特にそれが「おかわいそうに」のメンタリティにつながりかねない記述のしかただったのがなあ。(民族衣装の切り裂き事件など)それを書かなくても記事としては成立したと思うんだが。

個人的には警察の裏金問題を暴露して非難の矢面にたった仙波敏郎氏氏のエピソードが素晴らしかった。

また例の「自己責任」という言葉を結果的に世間に広めることとなった一件の高遠菜穂子氏に関してちゃんとした全体像をまとめてあるのはそれなりに読みでがあった。ただしやはりこの件に関する違和感はそれを読んでも消えなかったのだが。この違和感はなんだろう―と考えてみるに、やはりリスクコントロールに関する考え方の問題か。

「なぜ」「あのときに」「わざわざ鉄火場の」「イラクでなければ」「いけなかった」のか?

そこに関する共感、というか腑に落ちる物語がみえてこない―すべてはそこだと思う。

ただ高遠氏がやっていた・やっていることに関しての一定の評価はするべき・されるべきだとは思う。
上から目線の言いようで申し訳ないんだが。


AR〈拡張現実〉入門 (アスキー新書)


個人的に興味津々のAR技術についてまとめた一冊。
「入門」とあるように現時点でのARに関する動向を全体としてざっくり把握するには非常によい本。
この薄さで必要な情報を満遍なくまとめてあるように思う。GJ。


科学と神秘のあいだ(双書Zero)

いわゆる「科学的」であるというのはどういうことかをゆるめのエッセイで語った本。
いい内容だったと思うが、人によってはこの文体にイラつく人もいるかもしれない(笑)。

「科学的」である、ということは「実はかなり身もフタもないことである」というのを何度も(ただしやわらかく)語っているが、そんなに読者気にせんでも・・・とか思う。

身もフタもないところにも希望はある、とも書いているが、そこはあまりビビッドには伝わってこなかったな。
理屈ではわかるんだけど(笑)。

あとご自身でテルミンの演奏を行うバンドもやってらっしゃるとのことで音楽的な比喩もけっこうでてくる。

科学的である、とかニセ科学に対しての興味があって、かつ音楽も好きだという人にはそこそこ読める一冊。
上のように書いたが、こういう根幹的な認識というのは実はこれからますます必要とされる。
このような認識をちゃんと持っていることは次代のリテラシのひとつだろう。

余談となるが、部分部分で詩想のある文章がぽろっと出てくるところはステキw

「Kawaii」は世界標準語?

標準

自分は日進月歩の情報に取り残されないために、いちおう毎週、週刊アスキーを買ってる。

出版不況ということもあって、値段は徐々に値上がりしているが、基本的にPCやITそのものの情報はもちろんなんだが、その周辺のサブカルチャー的な部分の連載陣の質が非常に高度で、まあ値段分の内容はあるか、ということで値上がりぶんは了承。

で、そういった連載の中で最近面白いのが日本のポップカルチャー―特にその女性ファッションが世界で独特の訴求力を持ち始めているのがありありとわかる「ユー・ルック・ソーカワイイ!」という連載。

この連載を読んでいると、いかに日本がこういったファッションやデザインにおいて社会の許容度が高く、またその中で追求されている「カワイイ」的なものが全世界的に影響力を持ちうるか―その点が非常によくわかる。

乙女心は世界共通か!?(笑)

で、そういった視点は「これから先」ということを考える上で実は非常に重要な視点で、最近ニュースにもなった某ネット企業のように社内公用語を英語にする、というふうに情報の流通手段やルールとしての英語は、いやでも全世界を覆いつつあるが、実は大切なのはそういった(英語やITのような)共通フォーマットを使って

なにを発信するのか?

という点なわけで。実は意外とそこが抜け落ちとるっちゅーか。

それに関して週アスの総合編集長である福岡氏が出したひとつの回答が、そういった「ジャパニーズ・ポップ・カルチャー」のみが持つ独特の魅力ということなのだろう。

その具体的な提案がこのiPhoneアプリだと思う。


Tokyo Kawaii Magazine


(iTunesストアでのリンクはこちら 注:有料+英文)

半年ほど前からに出ていたようで既にけっこう号数を数えているようだが、全文すべて英語で、エヴァンゲリオンのキャラクターなどを使いつつもTokyo発のポップカルチャーやファッションを取り上げた電子書籍になってる。

初回のみ若干割引になってたので購入してみたが、これはありだわ、非常に品よくまとまっている。

加えて英文で紹介されているということも大きいと思うんだが、秋葉原(いやakihabaraか)の点景写真が、一種独特の異国情緒を伴って見えてくるのには驚いた。
(外国の人からはこう見えてんのかなという)

常々思うんだが、ITにしろ英語にしろ―その正体は共通言語・標準化そのものであって、これは国境や時間は言うに及ばず、プロとアマチュアの世界すらもそれに沿って融解されていく。

そしてそのとき、そこにおいて一番重要なのは、その共通化・標準化を受け入れるということそのものではなくて(それは実は前提に過ぎない―できて当たり前―だから重要ではあるんだが)

それをつかってなにを語るのか?


もっというと


あなたはナニモノ?


その問いに答える答えるということでもある。
実は皆さんけっこうその「前提」の部分に関しては問題意識持って必死にやっているんだけれど、いま言ったような「その先」にある問いに関してはもの凄く無防備なような気がする。

そして実はそのことに重いが至ると、必然的に戻っていかざるを得ないんだよね

自分の国籍とか自分の国の歴史に―。

これは実は海外である種一番嫌われるのが無宗教な人間であるということに通づるかもしれない。

人は無個性の海に放り出されて始めて自身の生来の個性を悟る―そういうことなんだろうと思う。

そういう意味でこういう平和なモンが(平和ボケといわれようと)戦後日本がナニモノであるかという一部を語るものであるということは、意外と幸せなことなのかもしれないとも思う。


そしてそういったところをいち早く見抜いてる福岡編集チョ、さすがです。

銃殺刑はないので絞首刑でよいですか?(嘘)

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連日の円高は一時83円台、株価は8900円を大きく割り込み、年初来安値を更新。
それに対し金融当局及びお上のおっしゃることには―

「注意深く見守りたい

はやくもこれに対してネット界隈では

「注意深く見守るだけの簡単なお仕事w」

と揶揄されておりますが(苦笑)。

えーと、クルーグマン先生は「じゃあ銃殺でw」とおっしゃいましたが、残念ながら我が国には銃殺刑はないので絞首刑でよろしいでしょうか?(違

日本経済のウソ (ちくま新書)

冗談はさておき―。

しかしそういいたくなるぐらい政府・日銀の無策・無能っぷりが白日の下に曝されておりますが、(ズブのど素人どもの)民主党はともかく、曲がりなりにも経済の専門たる国家の中央銀行がかつてのCMのフレーズじゃないが

「みーてーるーだーけー♪」

と傍観決め込んでもなんの処罰もなく安泰とはつくづく日本は平和な国だと思う。
(分かってると思いますが皮肉ですよ?)

それもこれも、なんでも「中央銀行の独立性」という名分があるかららしいんだが、本書ではその捉え方が大きく間違ってる―世界中探してもそんなアホな意味で「中央銀行の独立性」を使っている国はないとばっさり。そう、世界的な意味でのこの”独立性”の意味は

中央銀行の”目標の独立性”ではなく”手段の独立性”だ―と。

だけどね、なぜかその区別がつかなかったバカどもが法律(日銀法)改正しちゃって、法律的には日銀が勝手に金融政策の目標決めてもいいんだってw

ありゃ、書いてる途中だったがなぜか公開状態にw

まあいいか。

えーということで高橋洋一氏の著書もう一冊はこちらでした。

先日紹介したものより一段上の内容なので正直どこまで理解できてるかは不安なんだけれども、前著の内容をさらに日銀の金融政策や政府の財政政策に焦点を絞り、かつ具体的な数値をあげて日銀がデフレを意識的に誘導していることを述べている。

一見耳を疑うが、どうやらこれは本当らしい。

デフレで物価が下がるというのは一見いいように見えるが、実は結果企業の収益が下がる→従業員の給与が下がる→経済全体の規模が縮小するということからみても決して好ましいものではない。

しかし日銀はどうもそれを意図的に望んでやっているらしい。
それも内部ルールを維持するためや(なんらかの国の利益のことを考えてではなく)役人としての保身のためにやっている―本書を読むとそうとしか考えられない。


終わっとる、アホかと。


ほんでそういう志操も矜持もなんもない小役人どもを指導しなければいけない(誰かさんがイニシアチブを取るというとりましたな)政府も


みーてーるーだーけー♪


今日午後急激に株価を下げたのは明らかに政府与党のアナウンスが市場へのちゃんとした声明(アナウンス)の体を成していなかったからだろう。

一部掲示板などでは「もういいからしゃべるな!!」という怒号に近いコメントも飛び交ってましたな。
加えてこの無為無策状態がへたすると民主党の総裁選終わるまで続くかもしれないという―。
(日銀としてはいま金融政策を打っても新しい党首へのアピールにはならないかららしい、ははははは)

実はほんとうに日本の経済メチャメチャにしたいのかもね。
なにかそういう長年の夢でもあるのかもしれない―冗談抜きでいまの無策っぷりはそう感じる。

しかし本書を読んだあとではあまり暗くならない。

なぜか―?

なぜなら本書に従うならば、いまの日本の景気の悪さや経済状態の悪化というものの根本的な原因はこういった小役人や無能な政治家が原因の人為的なものであるというのがある程度いえるから。

そう、人為的なものであればそれはそれなりにやりようがあるということだよ。

そういう意味で、いまの不景気の理由も見えず嘆くという不毛なことはしなくて良くなった、ある意味すごくいまの不況をポジティブにとらえられるというか。

ハードルの高い一冊であるが、いまの世の中の経済的な問題を理解しようと思う方は一度手にとってみられることをおすすめする。

※08/26追記
 うははは、この期に及んで責任者海外出張ですかw日本終了のお知らせwww