【レビュー】『クレープを二度食えば』とり・みき

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著者のとり・みき氏はいわゆる”理数系ギャグ”の代表選手のような方だが、そこから離れた”リリカル”な作風の短編ばかりを集めた一冊。

『クレープを二度食えば(リュウコミックス)』



自分は表題作を、おそらく初出の別単行本で読んでいたと思うんだが、なんでも涼宮ハルヒかなんかでこの『クレープ~』が取り上げられていたため、今回あらためて単行本化となったらしい。

リリカル作品集、とあるが、もともとギャグマンガ家であると同時に、猛烈なSFフリークであるとり氏のその方面がいかんなく発揮されている一冊でもある。

同じ九州出身のSF作家・梶尾真治氏のそれと、どことなく同じ空気感があるのが趣き深い。
(作中にも氏へのオマージュと取れる描写多々あり―本書はそれよりややハードボイルドだが)
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【レビュー】『セツ 2巻』

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やはり木葉功一は天才だ。

『セツ 2 』



今回は表紙もちゃんと華があっていい。
なにより素晴らしいのは本巻巻末の犯人に対するセツが涙ながらに語るそのシーケンス。

世界がウソ臭く感じる、あらゆる感情の緩慢な麻痺

それはあなたが”あなたの名前”を生きていないから


核心だよ、これ。


やはり木葉功一は天才だ。




※2022/06 追記
本作『セツ』のシリーズは大手出版社からの紙媒体での出版は打ち切りのような形となったが、著者御本人が再編集版というか直接編集して再構成されたシリーズがKindle版にて出版されている。表紙のビジュアルも華やかになってある意味「完全版」といってよいだろう。

詳しくはamazonの著者ページを参考にされたい。

ナンバリングが変に凝っているせいでややこしいが、基本数字の順でOKのはずである。
内容に関しては読むに値する作品であることは十二分に保証する。
興味のある方は是非どうぞ。








※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

【レビュー】『シドニアの騎士 4巻』弐瓶 勉

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科戸瀬がヒ山さん化するのか(笑)。

『シドニアの騎士(4) (アフタヌーンKC)』



前巻とそんなに時系列は進んでいないかと思うんだが、ちょっと雰囲気変わった。
科戸瀬が正式な衛士に緑川は管制官に―ばんばん死人の出る物語なので世代交代が早いということかもしれない。
(世代交代ということでは、千年単位で航行する播種船という設定なのでそういった”世代”をまたいだ物語もできるわけだな、やろうと思えば)

ほか新型兵器でてきたり(これがある意味永野版Type-100とコンセプトそっくりでワロタ)、播種船全体に関わる膨大な知識と秘密を封じ込めた「落合の補助脳」の(部分的とはいえ)開放シーンがあったり、いろいろと伏線が張られていく模様。

ただこのマンガ、人の名前が漢字がややこしい+慣れるまで人の顔見分けがつきにくいのな。

感想書くのも一苦労だわ(苦笑)。


『新装版 シドニアの騎士 (全7巻)』










※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

【レビュー】『ウルフガイ9巻』

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竜子のヤンデレぶりがサイコーですw

『ウルフガイ 9 (ヤングチャンピオンコミックス』



もう原作でいくと第一巻目かなり終盤なんだがあと2巻ほど使いそう。
で、ここまでつかってある種の恋愛マンガということが発覚(笑)。

ちゃんと本来の青鹿先生との2ショットのカットをあとで出しているとはいえ、羽黒と犬神の2ショットはどう考えても腐なみなさまへのサービスカットでしょう(苦笑)。

冗談はさておき、このシリーズはウン十年前の原作をうまく現代にアップデートしていて、その現代ならではのディティールで、原作にある人間の心の持つ闇の部分を非常にうまく浮き彫りにしている。

今巻でいうと舞台となる博徳学園の生徒たちがネット掲示板に書き込む小枝的なシーケンスとか。うまいね。

全体的にそういった伏線を張ったり回収したりでラストへ向けて・・・という巻だと思うんだが、そういった枝葉の部分の描写がうまいだけに、つくづくここまでの根幹のキャラクターたちの感情的な配置の弱さが惜しい。

主人公・犬神明と青鹿先生がようやく本質的・精神的につながるのが本巻だし、第二の人狼・神明は早く正体を明かしすぎた(読者にバレバレでも謎めいたままラストまでいったほうがカッコよかっただろうになあ)

あ、前巻のレビューで指摘したカーディガンのシーケンスは今巻でちゃんと描かれていました。

とはいえ、本作はこれまで散々ビジュアライズされてきたにも関わらず一本も決定打が出なかったウルフガイシリーズのビジュアル化において、まず間違いなしの最高作だろう。

それはちゃんと原作の本質の部分をわかってコミカライズされているから。

ということで次巻以降いよいよクライマックスだと思うんだが、楽しみに待ちたいと思う。

まあ、今巻いちばん良かったのは竜子のヤンデレぶりなんすけどね。
彼女のあの独白は、片思いというものにおける、ある種の本質だろう。
その意味では、ここまでの本作は、彼女を含め、そういうモンに「出会ってしまった」連中の群像劇ともいえるか。

ある意味切ねえな。













※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

【レビュー】『REAL 10巻』井上雄彦

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名セリフのオンパレードだなあ・・・
どうしてこうも心を打つセリフを次から次へと紡ぎ出せるんだろう?

『REAL 10 (ヤングジャンプコミックス)』



わかってる

経験ある

こんな状況

何もできない存在としての自分

どうすべきか知ってる

口を閉じて

ただ脚を・・・じゃねえ

腕を動かせ!!


いつか必ずやってくる・・・

「できるようになる」瞬間まで―



いまのところこのシリーズは自分の中で電車の中で読むのキケンな本ランキング第一位です(笑)。









※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正 

【レビュー】桂明日香二題

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週アスのハニカム二週連続休載だがちょうどよく新刊がw
成分補給に購入。

『神話ポンチ 2 (ヤングガンガンコミックス)』


前巻で登場人物の導入もすみ、さあ本編!と思いきや本巻にて完結。
前巻刊行の時点でもそれとなくそのあたりはにおわされていたがまさか二冊で終わるとは思わなかった。

ただ本巻の巻末あとがきでも書いてあるように最初からこのエンディングは想定されていたようで、そのあたりは一巻の同じく巻末あとがきでキャラクター名の由来から想像はできた。

ただせっかくギリシア神話をベースにした魅力的なキャラクターが多数登場していたのにそれを十分に展開する紙数なく終了してしまったのは正直なところもったいない気がしないでもない。
(ここは作者自身も言及してましたな)

とくに前巻ではあれだけ存在感のあったアテナにアルテミスの二人のウェイトがみごとにしぼんでいる。
まあこのあたりは完結を急いだ故だろうか。

たぶんそのあたりなんらかの事情はありそうだが、コレはこれでちゃんと作品としてまとまってはいるのでよしとする。

しかしあのアテナの天然ボケは正直もう少し見ていたかったw

『ビリオネアガール(1) (アフタヌーンKC)』




こちらは原作付きの模様だが、作風というかテイストは桂作品のそれをちゃんと感じる。
(唯一違う点はやや前述の”ボケ”成分が少なめなところか)

デイトレーダーとして天分の才を持っていたばかりに、有り余る富と引き換えに普通の生活を失ってしまった少女と彼女を知る叔父から彼女のことを頼まれた主人公の物語。

桂明日香という作家を考えるときに上記からだけではそのシチュエーションがマッチングするか首をかしげる向きもあると思うが、ヒロインの持つ屈折した暗さというのが実はかなり根本的なところでシンクロ率高いのではなかろうか。

ただし前述のように”ボケ”成分が少ないこととデイトレードというモロ”金(かね)”という抜き差しならぬものがテーマとして含まれているので、けっこうガチで逃げ場のない作品になる可能性はあると思う。

版元から講談社での連載作品のようだが、案外その渡りの部分や作品の持つそういったところの性格故に週アスの連載がたびたび落ちる原因になっているのかもしれない。

だとしたら講談社もけっこうアコギなことするな。
まあ出版不況がマンガ業界にも深刻な陰を落としている昨今

「こいつは使える!」

と思ったらなりふり構わずなのかもしれんが。

そんなことよりちゃんとモーニングてこ入れしてくれ。
佳作は多いのは認めるが主砲がないんだよ、バガボンド休載しっぱなしで。
(井上氏はかなり身体壊されている模様だし)

「ああ、今週もハズレ号か」とがっくり肩を落とすこと多いんだよ。
『へうげもの』載ってなかったらコラムページだけが楽しみってそれどういうこっちゃ!?
(4コマはまた別ね)


いかん最後脱線したw










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