ローグ・ワン/ギャレス・エドワーズ 監督

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そろそろ終映ということで先日慌てて観にいってきた。おそらく「本編」以外のスターウォーズとしてある程度のレベルで制作されたのは本作が初になるのかな?

※以降、若干ネタバレあり


ストーリーとしてはEP123とEP456の間をつなぐダースベイダー誕生以降~ルーク登場までの間を埋めるスピンオフということになる。そういう時代設定なので当然味方側にジェダイ騎士が一人もいないという意味でも初の作品だろう。

そういう意味でスターウォーズ(以下SW)シリーズ「本編」の持つスペシャル感が良くも悪くもなくて、通常の「洋画」としてのSWといった感じで、これはこれで新鮮だった。(このあたりはルーカスフィルム独特の執拗なディティール感のもつぬめっとした感じがないあたりからも感じられた―これはEP7も同様)

監督も最新ハリウッド版ゴジラを担当したギャレス・エドワーズということもあって、非常にクセのないそつない仕上がりという感じ。エンターテイメント作品としてのツボを外さず手堅く作っている感じのする作品で、劇場で見て決して損のする感じのないレベルの仕上がりになっている。

ただSWという大長編シリーズがベースになっている中でいろいろとあがいたというか、バランスのとり方は制作側としてはむつかしかったのかもしれないなと感じるような部分もいくつか。

本作は前述のようにシリーズ初の「ジェダイのいない」=「普通の人々」のSW。そのために主人公・ジンの少女時代からそのバックグラウンドを比較的丁寧に描いているんだが、両親とのエピソードはともかく反乱軍の中でも独立勢力的なソウ・ゲレラとのエピソードは正直混乱を招く原因ともなってたように思うので余分ではなかったか。
(ただこのゲレラというキャラクターは別のスピンオフでも登場する人物らしくわかる人にとってはいいキャラクター配置らしい)

このジンのキャラクター背景の描写はストーリーの核心とも絡むので必要不可欠ではあったんだけども、ちょっと惜しいなと思うのはそういう背景の描写に対して、現時点でのジンがどういうキャラなのかという描写はこれだけの長尺のフィルムの割には薄かったのはちょっともったいなかった。ここをもう少し感情移入できるようにしておいてもらえたならクライマックスももっと感情的な盛り上がりが観客の中に生まれていただろう(幼少期から本編に入るのではなく、現時点の彼女から回想させる等すればこのあたり避けられたのではないか)。ただこのあたりがSWシリーズ作ということで、あまりそういう「のめりこみ」を演出してはいけないのか知れないが。(SWはある意味娯楽映画ではなく、アメリカにおける「神話」や「寓話」の側面もあるので)

そういった点を除くとあとはいわゆる「ローグ・ワン」隊の面々もそれぞれ個性的な感じで、このあたりは素直に楽しかった。特にドニー・イェン演じる盲目の棒術使いはジェダイ騎士のいない時代にあって数少ないジェダイ的なものを感じさせるキャラクターで、非常においしい配役(笑)。このあたり巨大マーケットでもある華人圏への配慮もあるのだろうが、これはこれでいいと思う。この棒術使いとコンビを組むおっさんも男同士の友情が感じられて非常にいい感じ。そして個人的に一番良かったのはドロイドのK-2SO。彼のラストはなかなか感動的で作中で一番ぐっと来た。

あと本作で少しびっくりしたのはハリウッド製のエンターテイメント作品としては珍しい全滅エンドであるということ。個人的な印象としては、ハリウッド作品って途中でメンバーは誰かしら犠牲になっても、主人公は徹底的に生き残るというか、死んだら意味がない的な思想が徹底していると感じていたんだけども、本作は少しそれから外れる感じ。ただこのあたりも本作の立ち位置が「本編」に対しての「スピンオフ」だから、ということの証明なのかもしれない。

最後になるが、そういったストーリ本筋がありつつも本作の最大の魅力はやっぱりSWシリーズとしての有名キャラクター達のさりげない登場だろう。先日レイア姫役のキャリー・アン・フィッシャーさん亡くなられたが、彼女もEP4へつなぐラストへのシーンでその若き日の姿で登場しているし、かの名悪役のターキン卿も当時の容貌でがっつり登場。調べてみると両者ともCG+生の役者さんのミキシングで成立しているらしい―このあたりほんとすごいよね。ワンカットだけC3PO、R2D2も出てた。

そしてやはりSWといえばあの人!ということで例の暗黒卿も出てこられます、それもラストのほうでその強さを余すところなく見せつけてて、ファンにはたまらんでしょうなあ。

ということでシリーズ作品初の本格的スピンオフとしてはまずまずの作品となっているのではないだろうかと。
ある程度のクオリティが望めるのであれば、こういったスピンオフはもう少しいろいろ見てみたいと思うし、本作の評価はほどほどよかったようなのでそのあたり今後期待できるかな?

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