月額レンタルをそろそろ解約したいので消化試合気味に可能枚数分を見るべく続編の『ジャスティスの誕生』と一緒に。
いわゆるアメコミスーパーマンのリブート作品だが、監督ザック・スナイダーなのね、ということでちょっと期待。
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で、結論からいうとリブート企画としては非常にいい仕上がりかと思う。
どう考えても現在のセンスからはダサすぎるSマークに赤マントもそれなりに説得力が見えるのは、前段にあたるクリプトン星の崩壊シーンをかなりのウェイト割いて冒頭で描写したこと+抑えたフィルムのトーン故の効果だろう。特にクリプトン星崩壊の段落はスーパーマンの父にあたる人物をラッセル・クロウが演じ、それだけでも一本作れそうなウェイトを割いている。
そのうえで、その彼らクリプトン人の最後の希望たる一人の嬰児が地球へ託されるわけだが、その彼を育てる義理の両親がケビン・コスナーとダイアン・レインというこれまた豪華な配役。ケビン・コスナーもダイアン・レインもすごくいい歳のとり方したなあと感じられるルックスで、そういう人生の年輪を感じさせるベテランを育ての親として配置したからこそ、その非常に特異で複雑な生い立ちに悩みつつも彼は道を踏み外すことなく成長した―そういう説得力がばっちりだった。
で、そういったバックボーンを丁寧に描いた後に、いわゆる世間一般が想像するスーパーマン的な活躍が展開されるので、そのシーンだけ見せられると絵空事くさい数々の超能力に一定の重みを感じられる―ここまでは制作陣大健闘だろう。
しかし問題は彼を追って地球へやってきたクリプトン人の生き残りたちとの戦闘に物語の主軸が移ってきてからがちと評価がむつかしい。
基本この対クリプトン人との戦闘もこの一本だけを考えるのなら別に悪くないし、宇宙船のデザインや役割なども近年のSF大作的なビジュアルやコンセプトをきっちり反映してあるので悪くない、敵の戦闘に特化した兵士たち―敵の主要人物のゾッド将軍の副官のねーちゃんなど非常にかっちょいい。宇宙船もテラフォーマーであるというとこも悪くはないんだ。
しかしちょっとこのあたりの戦闘のスケール感を頑張って大きくし過ぎたかなあ、というのが続編『ジャスティスの誕生』を見た後だと感じてしまう。要は派手にアクションやりすぎ+敵のスケールでかくし過ぎで、全部最後はクリプトン人同士の超常対決になってしまい、結果的にそのすごさが逆にすこしわかりにくくなってしまっている。なにせすごい勢いでぶっ飛んでいくわ、相手を分投げたら高層ビル数十個連続でぶち抜いて止まるといった感じなので、細かな部分の演出で見せるというよりもう昨今ならではのCGによるVFXの力業で押し切る、そういった感じ。要はそういうパワー&スピードを頑張りすぎたためフツーの人間たちが割り込める要素が非常に狭くなっているので、結果的に作劇の幅も狭めてしまったといえばよいか。
とはいえ、逆にそういった超常の対決にしてしまったので人間・クラーク・ケントとしての拠り所となる義母と彼女となる新聞記者のヒロインとの物語へヒューマンドラマ部分のウェイトはきっちりと落とし込めている。なのでよくありがちな「USA!USA!」的な地球防衛軍としての米軍頑張りました!俺たちのチームワークの勝利だ!的な群像劇的な描写は他のこの手の作品と比べるとやや薄い(まあ別にこのことも悪くはないんだが)。
以上より本作はけっこうシリーズものとしてみるか、これ一本の単独の作品としてみるかで評価が分かれると思う。
本作を一本の単独作品としてみるのならスーパーマンという非常に扱いずらい題材をよくここまで一般映画に近いテイストへ落とし込んでリブートできたな、ということで好評価。シリーズものの一本として考えると、ちょっと盛り込み過ぎかつ頑張りすぎで続編でのインフレーションを不可避にしてしまったということでもったいない一本ということが言えると思う。
なにはともあれ、青いスーツに赤マントがこれほど違和感感じずに見れるということだけで、そのフィルムメイキング的なクオリティは非常にハイレベルといえる。
一般映画としてはきついかもしれないが、アメコミ原作のエンターテイメント映画としては、最近のダークナイトシリーズ的なかなりリアル側に寄せたハイクオリティな一本といえるだろう。
しかし自分ですら以前のスーパーマンろくに見てないので、最近のこういった映画のコアターゲット層にどれだけ通じるのかというのは単純にちょっと興味はある。
ザック・スナイダーは個人的には『Sucker Punch』(邦題『エンジェルウォーズ』)を見て以来センスのある監督さんという認識だったので、その点に関してはハズレはなかった。
こういうエンタメ作品が嫌いでなくて見るチャンスがあるのならみても損はない一本かと思う。
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