【レビュー】『ゴティックメード・花の詩女』永野護

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FSSを8年近く休載してまでやろうとしていたこと―信者ならこの目で確かめずばなるまいw

移民星・カーマインプラネットには”詩女(うため)”と呼ばれる、民衆の心の支えとなる代々続く巫女がいた。新たな巫女は、就任に際し歴代の巫女の記憶を引き継ぎ、都までの道のりを行幸する。
新たに巫女となったベリンは、いままさにその都行きに出発しようとしていた。その時、巨大な戦艦が巫女たちの前に現れる。現れた少年はドナウ帝国第三皇子トリハロン。彼が言うには、この星の政情の混乱を狙って、新たな巫女を狙うテロが計画されているという。彼はその護衛ため惑星連合から派遣されてきたのだ、と。こうして詩女と皇子の不思議な旅は始まった・・・。

前々からいろいろ情報は出ていて、かなり少人数で作っており、そのアニメーションの大部分を監督・原作者である永野護自身が手がけている、ということでいろんな意味で注目されていた一作。
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第9回MMD杯・私的選集

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フリーソフトにもかかわらず、圧倒的な操作のしやすさと膨大なユーザーライブラリを擁する3DCGアニメーションツールMMD(Miku Miku Dance)。

そのMMDを使ったアマチュアCGアニメの大会であるMMD杯の第9回が先週閉会、結果発表があった。

回を追うごとにどんどんクオリティが上がっていく本大会だが、技術だけでなく、アイディアでも勝負できるいい意味のゆるさも持つ懐の深さを持ち続けているのが、なんとも素晴らしい。

今回は投稿作品数も700本弱かつハイレベルのものが多かったように思うので、個人的な感想を交えつつ紹介しておこうと思う。




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空白―井上雄彦

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鼻風邪を引いてこの3,4日行動不能だったのでその間に。

空白/井上雄彦



井上雄彦氏、バガボンド休載前後についてのインタビュー集。

ここに書かれていることと、じぶんのこととはレベルの天地の差はあると思うが、非常に得心のいく、というか思わずうなずく内容だった。

なにかを作る、というときにある程度のところまでは、ロジックやスキル、あるいはその蓄積で作ることは出来るが、自身の感覚を”その先”へ連れていってくれる境地へ導くには、高負荷と楽しさが溶け合って混在するような、止揚したような状況が必要になる。

そういうときって、しんどいけど自分の全能力が能動的に動いている感じがして、負荷を感じつつ負荷とは感じていない、それ以前にその状態が楽しい。
(この”楽しい”というのも正確に言うと若干ニュアンスが違うのだが)

こういう状態の全能感、というのはたぶんなにかを極めた皆さんは、漏れなく経験されてるんじゃないかな。

そしてそういうところで通用するのは、「理屈」「論理」「技術」ではなくて、種火のように静かに燃えて方向性をしめす「気持ち」と「感覚」。

このとき、この「感覚」と相反する状況に身をおいてしまうと、エネルギーが強い人であればあるほど、コンフリクトを起こしてしまうと思う。

そういった「状況」に対しても自己制約のきつい方ならなおさら。

井上氏のケースはそれじゃなかったのかな。

克己心とそういう感情・感覚の力、その双方が尋常じゃなく飛びぬけて強いんだと思う。
ましてやそれが、自分で設定してしまったものなら、なおさら。

なにかものを作ろうか、という全ての人が目を通しておいて損はない一冊だと思う。




自分の気持ちに嘘をつかないこと―そのなんと大切なことか。







スティーヴ・ジョブズの死

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さほどのヘビーユーザーでも信者でもなく、iPhoneや自宅のPCの一台としてmac mini使ってる程度のライトユーザーだが、以外とショックでかかった・・・。


ご存知の通り、美談だけではなく、アクも強くいろいろと物議をかもしたひとでもあったが、やはりその功績ははかり知れない。

なによりも大きいのは、多くの人がパーソナルコンピュータを単なる”ビジネスの道具”という地位に貶めることに疑問を持たなかったのに対し、彼一人はそれを許さず、もっと素晴らしいもの、人をより人として解放してくれるものとだ、という”確信”を黙々と具現化していったことではないだろうか。

実は、いまの大規模なビジネスの多くに決定的に欠けているのが、この”確信”—理念とか信念とかといってもいい。

それを通して、あなたは世界をどう”素晴らしく”変えたいのか?

そのビジョンの決定的な欠落だ。
かれは徹頭徹尾、その多くの人に欠けている”ビジョン”を持ち続けた人だったのだと思う。

そういった彼のスタンスを理解すれば、枯れた技術の集大成ともいえなくもないiPhoneが、なぜこれだけ多くの人を魅了し、最先端のデバイスと認識されるのかもわかるだろう。

そこに”こうしたほうがもっとワクワクするじゃないか”という感性、自分の内なる声があり、彼はそれを決して”だが現実は””そんなの無理だよ”という言葉でごまかさなかったからだろう。

それは生半可なことではできなかったし、だからこそ彼の関わったプロダクトは、その彼の哲学を吸い込んで、今なお独特の輝きを放っている。

パーソナルコンピューターと密接に関わる生活をしているものの一人として、その彼の偉大な功績を思いつつ、今はただそのご冥福を祈るばかりである。

これまでの素晴らしい作品の数々、ほんとうにありがとうございました。
いつかまたどこかで—。







スティーブ・ジョブズ 人を動かす神ーなぜ、人は彼に心を奪われるのか?



(以前読んだ本。賛否ある本のようだし、事実くどかったが、それでも自分はこれを読んで単純にすごいと思った)