【レビュー】『ウルフガイ9巻』

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竜子のヤンデレぶりがサイコーですw

『ウルフガイ 9 (ヤングチャンピオンコミックス』



もう原作でいくと第一巻目かなり終盤なんだがあと2巻ほど使いそう。
で、ここまでつかってある種の恋愛マンガということが発覚(笑)。

ちゃんと本来の青鹿先生との2ショットのカットをあとで出しているとはいえ、羽黒と犬神の2ショットはどう考えても腐なみなさまへのサービスカットでしょう(苦笑)。

冗談はさておき、このシリーズはウン十年前の原作をうまく現代にアップデートしていて、その現代ならではのディティールで、原作にある人間の心の持つ闇の部分を非常にうまく浮き彫りにしている。

今巻でいうと舞台となる博徳学園の生徒たちがネット掲示板に書き込む小枝的なシーケンスとか。うまいね。

全体的にそういった伏線を張ったり回収したりでラストへ向けて・・・という巻だと思うんだが、そういった枝葉の部分の描写がうまいだけに、つくづくここまでの根幹のキャラクターたちの感情的な配置の弱さが惜しい。

主人公・犬神明と青鹿先生がようやく本質的・精神的につながるのが本巻だし、第二の人狼・神明は早く正体を明かしすぎた(読者にバレバレでも謎めいたままラストまでいったほうがカッコよかっただろうになあ)

あ、前巻のレビューで指摘したカーディガンのシーケンスは今巻でちゃんと描かれていました。

とはいえ、本作はこれまで散々ビジュアライズされてきたにも関わらず一本も決定打が出なかったウルフガイシリーズのビジュアル化において、まず間違いなしの最高作だろう。

それはちゃんと原作の本質の部分をわかってコミカライズされているから。

ということで次巻以降いよいよクライマックスだと思うんだが、楽しみに待ちたいと思う。

まあ、今巻いちばん良かったのは竜子のヤンデレぶりなんすけどね。
彼女のあの独白は、片思いというものにおける、ある種の本質だろう。
その意味では、ここまでの本作は、彼女を含め、そういうモンに「出会ってしまった」連中の群像劇ともいえるか。

ある意味切ねえな。













※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

【レビュー】本来胃が痛くなるぐらいで”ちょうど”なんだが―(『ウルフガイ 8巻』)

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平井和正の代表作、ウルフガイシリーズのコミック版最新刊。
原作でいうところの第一巻『狼の紋章』の終盤部分に入っている。

『ウルフガイ 8』 (ヤングチャンピオンコミックス)



表紙にあるように青鹿先生がエライ目にあわされてしまうシーケンスですな。

掲載誌をコンビニでチェックはしていてちょっと周りを気にしなければいけないような描写の連続ではあるんだけれども、通しで読むとちゃんとストーリーを損なわず、必然性を持って描かれているのでほっとした。

原作では影の薄い脇役・田所先生がちゃんと存在感出しているところもよい。

ただ一点、ここになって惜しいと思えるのがやっぱり犬神明と青鹿先生の精神的なつながりの部分の描写がまだ足りてなかったのかな、というところ。

これは実は原作でもそういうフシがなくはないんだが、原作での名シーンである、拉致された先生の小さなアパートに残されたカーディガンを見て犬神明の心が決まるところは残しておいてほしかった。

ただしその代わりといってはなんだがなんだが羽黒の凶悪さは原作の何倍もブーストアップしているのでそこはヨシ。

まあこういう暴行のシーンって昨今のマンガはしれっと載せてるが、本来こういう描写は読んでる読者の胃が痛くなるぐらいでちょうどなんだよね。

そういう意味ではほんとうの意味での暴力性、人の尊厳を破壊する、あざ笑うという意味ではまだベルセルクの13巻には遠く及ばない。
(この点、暴力性―という点では前々巻の千葉への暴行のほうがえげつなかった)

所詮フィクションだといってしまえばそれまでだが、暴力は暴力として徹底して描かないと。

でないとそれをファンタジーと解釈してしまうバカがまたぞろ沸いてくる。
ただ逆にいうと日本のこういうコミック文化はそういった暴力を本当の意味としての暴力として描けるところにまできているということではあると思う。

そして人間―ホモ・サピエンスという種のどうしようもない暴力性・暴虐性への告発がこのウルフガイシリーズのテーマのひとつでもある。

あと・・・2,3巻で『狼の紋章』のセクションは終了のはず。
以降、いよいよ本編。













※2022/06 標題の表記を統一、リンク修正