バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 /ザック・スナイダー監督

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月額レンタルの消化試合にて『マン・オブ・スティール』と同時に。
ある種『マジンガーZ対グレートマジンガー』的な作品と思いきや(それもハズレではないが)以降のDCコミックス関連作品を展開するための布石のような戦略的な一本ですな、こりゃ。

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前作の『マン・オブ・スティール』と密接にリンクしている一本である。というかいちおう前作を見ないでも理解できる作りにはなっているが、基本的に前作の内容を前提にストーリーは構築されている。
しかし本作はその視点を前作のクラーク・ケント=スーパーマンからブルース・ウィエイン=バットマンへ切り替えることで、前作で描かれたヒーローとしてのスーパーマン、その負の側面から物語を見ることでより作品世界の広がりを持たせている。ここは素直にうまいなと思った。

冒頭から前作でのクライマックスにあたるクリプトン人同士の都市を破壊しながらの対決のシーンをウェインの視点から描き、そこで彼はその「大災厄」によって彼のとても大切にしていた従業員たちを奪われてしまうのだ。そしてそんな彼の悲劇に付け入り暗躍するひとりの男。彼の存在が表題にあるようにバットマンとスーパーマンの対決へと両者を誘い込んでゆく。

ということで前作『マン・オブ・スティール』ありきのストーリーが展開してゆくわけだが、実は映画作品としてのカラーは本作は前作とやや異なっている。どういうことかというと、普通ブルース・ウィエイン=バットマンという生身の人間が中身であるキャラクターが絡んでくるなら前作より物語中の世界はより現実社会的なリアリズムへ寄っていくのかと思いきや、本作はその真逆=よりフィクション的な・絵空事的な雰囲気へと作中の空気が変わってしまっている。

これはなぜかと考えるに、前作がスーパーマンの物語でありつつもその核心には異常な能力を持ちつつも心は一般人と何ら変わりない一人の青年=クラーク・ケントの心の葛藤にしっかりとウェイトがおかれていたのに対し、本作は主役に相当するキャラクターが二人に増えてしまったため、そういった内面描写にしっかりと時間を取れず、どうしてもその「直接対決」のほうにウェイトを割かざるを得なかったからだろう。(決して内面描写がないわけではないが、やはり本作でのそれは前作より散漫な印象を受ける)

そこに加えて『マン・オブ・スティール』のレビューでも書いたパワー&スピードのインフレがその内面描写の薄さに拍車をかけ、前作にあったような絵空事的なスーパーヒーロー映画と一般映画のぎりぎりを行くようないいバランスは崩れ、どうしても絵空事寄りのどんちゃん騒ぎ的な空気になってしまった。ただこれはバットマンの登場=あのコスチュームデザインと夜空に浮かび上がるスポットライトを出さざるを得なかった時点で確定的だったのかもしれんなあと同情はする。

で、そういった作品世界の空気間の変化が避けられないのなら・・・と思ったのかどうかは知らないが、本作は前作とはまた別の役割を持たされているようだーそう、DCコミックの各スーパーキャラクターたちの今後の登場への布石、というかそのハブとしての機能を期待されているというか。

実は本作内でその一端はもう組み込まれていて、それは下のブルーレイ特別版のジャケットを見ていただければ明らかだろう。

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まあ、出てくるわけですよ、この真ん中の美女が(笑)。となるともうこれは『マン・オブ・スティール』のようなシックな感じは期待するべくもなくーというかその期待自体が間違いで、しっかりとお祭り映画として楽しむ作品だというのが正解だろう。そう考えると特に悪い映画でもないのだ(ただ前述のようにスピード&パワーのインフレ+ラスボスが前作の使いまわしというのは発想が安くていただけんがw)。

ということでエンターテイメント映画としては悪くない一本だった。ただ『マン・オブ・スティール』のような方向性でいけばこういったアメコミ原作もののジャンルにまた新たな方向性が付け加えられたかもしれないのになと思うと、そこは少しもったいないような気もする。結果、評価の高いクリストファー・ノーランの手による『ダークナイト』的な作品路線というのはその直系となるようなフォロワー的作品が今に至るまで結局出てこなかったということになるか。このあたりちょっと残念ではある。

また昨年公開され少し話題にもなった『スーサイドスクワッド』も本作と作品世界は同一のようである。こちらがヒーロー側の全員大集合映画だとすると『スーサイド~』側はヴィラン(悪役)側の全員大集合映画ということで、そういった企画の方向性が最近のトレンドということなんだろうかな。





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