公開初日に観てもう一回見てから感想あげようと思っていたんだが、遅くなりそうなのでまず一度取り上げておく。
えー、ぜひ見といてください。そういう一本。
特にリアル顔見知りの皆さんはぜひ観にいっといて頂戴。
おそらく未見の人の間にあるであろう最大の誤解は「お涙頂戴の戦争モノ」というイメージだろうが、それ大誤解ですから。
むしろ日常生活が延々と(しかし注意してみると恐ろしい密度で)続く、その中のピークの一つとして戦争や空襲の描写もある、そういった感じ。
あくまでも「主」は当時広島から呉へとお嫁に来た二十歳前のすずさん、その日常生活にある。
マスでは大きく扱っているところは少ないようだが、一つはそれは主演の声優さんが元・能年玲奈さん、ということで敬遠されているということなんだろう。
自分はこの人のことを良く知らないのだが、本作を見る限りその主役への抜粋は大正解のように思う。もちろんその脇をベテランの声優さん(舞台での芝居もやるようなタイプの方々)が固めているので芝居に関しては全く違和感を感じることはない。
そしてその芝居と相乗効果を発揮しているのがその徹底した現地リサーチによる描写。これは原作のこうの氏、監督の片淵氏双方がちょっと考えられないくらいのレベルでリサーチしてから作画されているようだ。ツイッターなどを見ると劇場で当時の呉に住んでいた方々が「当時の私の住んでいた呉だ」と涙を流されたという話もちらほら聞く。
一見のんびりした絵柄に見えるこのキャラクターデザインで全然スカスカに見えないというのはそういう徹底したリサーチと、観客が一見して気づかないレベルでの細かい描写の積み重ね故だろう。また音響もけっこうよくて、それらの相乗効果もあってか、映画の中でみた空襲の描写が怖いと感じたのは初めてだった―一面炎とかそういうシーンでなく防空壕の中のシーンなのに。
繰り返しになるが、泣けるタイプの感動大作的な映画と思いきや、それは誤解。
ほんと泣いて笑って―特に笑ってのほうが多い―日々の生活が丁寧に描かれていく、そういう映画。
だからこそラストの街の明かりにこちらの心もほっとして温かくなるし、その明かりの持つ重みというのもわかる。そういう意味でぜひ多くの人に見ておいてもらいたい映画である。特に女性の方-さらにご家庭を持っている方にはぜひ見ておいてもらいたい。
個人的には後半からクライマックスの部分よりも、なぜか映画の冒頭でじんわりと涙が流れた。なんでだろうか不明なんだが、もう一度観にいってそのあたりは確かめておきたいと思う。
※余談だが、うちも母方の母方をたどると広島・呉あたりに行きつく。このすずさんのお話はある意味ウチの母方のばあちゃんの生きた時代の話でもある。作中で見た呉の景色は先月この目で初めて見た実際の呉を確かに思い起こさせるものだった。