すばらしいだけに悪しき先例にならないことを祈る。(【レビュー】『【初音ミク】むかしむかしのきょうのぼく』【VOCALOID】)

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さていよいよジャニタレwにも曲がパクられるなどますます勢い盛んなボカロ界隈ですがw

基本的にその成功要素のひとつとして実は「初音ミク」というのは一つの記号でしかないということが大きい。

どういうことかというと、”キャラクター商品”のように見えてキャラクター商品ではなく(本来単なる”楽器”だし)、その「初音ミク」を示す記号(その記号すらも”らしきもの”程度でOKという)さえ含んでいればどんなものでも「初音ミク」という単語でくくれてしまう。

実はこの点を読めずに単なるキャラ萌えと誤解してdisってた有名人がことごとく返り討ちにあっている。

なんせかのウィリアム・ギブスン氏*ですらそんな誤解をしていたわけで、disったあとちびって発言消してたどこぞのV系バンドなんぞは言うに及ばずw

だから実はミクに象徴されるボーカロイドというのはキャラクターじゃなくて音の世界に茫洋と拡がるメタな現象
(初期からのフォロワーはみんなあの『melody.exe』、3分44秒目の”翼”を見たときにそれに気づいていたと思う)

これまでにも何度か書いているが本当に音楽が好きならここを黙殺している人はかなり損をしていると思う。

自分の中にある”音楽”という単語にたどり着くまでどれだけの偏ったフィルタがかかっているのか一度考えてみたほうがいい。

で、ある意味そういった「初音ミク」の単語のもつ幅の広さ・多様性の海を象徴するかのような良作がまたひとつ。
曲はいうに及ばずPVも素晴らしいので毛嫌いせずに一度再生ボタンを押してみてほしい。
(初音ミクが単なる”萌え”であるならこんな目つきの悪いwミクありえないわけで)

集英社のヤングジャンプ誌で連載されている初音ミクの4コママンガにテーマソングを、ということで始まった企画らしいが、元はといえばこの4コマ、Web上のmikumixというサイトで連載されていたものが原型で、この目つきの悪いミクさん、当時からファンでしたw

素晴らしいのは曲・歌詞が一定水準以上のものなのにPVがそれに加えて更に力が入っている。
動画にあの「アボガド、バナナ」のポエ山氏絡んでるんだねえw

で、再生数もべらぼうな勢いで伸びてて、自分も堪能させてもらったんですが、ひとつだけ懸念が。

これ、こんだけ素晴らしい動画だけあって、やっぱり製作にかかわっている人の数が半端なく多い。

YJ公式ということでそのあたりのこともあると思うんだろうけど、こういうクオリティを大人数でプロダクション的にやるのが主流になっていくと、こういうショートフィルム的な動画ムーブメントに少なからず影響出ちゃうとおもうんだよね。

「大手が金出して人数使ってやるなら勝てるわけないじゃん」って。

何度も言っているけど、このニコ動界隈の自主制作動画の文化はやはり「才能のムダ使い」という単語に象徴されるように、個人が自分の意思で

「やりたいからやるんじゃあああああ!?

ボケェェェェェ!!」

というインディペンデントなある種のパンク・スピリットがあるから楽しいわけで。

そういう”志(こころざし)”のようなものがあったから『Nebula』や『炉心融解』、最近の『般若心経ハードコア』とかも楽しかったわけで。
あの『Corruption Garden』ですらもShadeのプロモーションという情報の出方が前後してたら印象違っていたと思う。

ここまでの素晴らしい流れというのは、実はそういう非常に微妙なバランスの上に成り立っている。

今回のこの動画は作品として好きだし、非常に素晴らしい。

それだけに―以降の悪い先例にならなければ良いが―それだけを心配する。
自分の杞憂に終わってくれれば良いが。






*ウィリアム・ギブスン・・・アメリカのSF作家。いわゆる夢と未来を描いた古典的なSFからブレードランナー的な退廃とした未来世界にSFの主流が切り替わり、電脳空間―電子ネットワークや、ナノマシン、サイバネティックな人体改造といった”サイバーパンク”と呼ばれるSFジャンルが台頭した。そのムーブメントの第一人者。
(当時そういった描写を国内で同時進行的にやっていた大原まり子もSF史的にはここに含まれる)

この人の描写した世界のディティールはご存知の方はご存知かと思うが、現在の世の中の在り様にかなり大きな影響を与えているといって良いのではないか。

代表作『ニューロマンサー』をそのまま映画化できなかったので生まれたのがかの『MATRIX』だったりする。

先日このギブスン御大がtwitterで「ミクは僕の好みじゃないね」と呟いたところ、実態を知るフォロワーたちからいっせいに「よりによってアンタがそんなこというてどないしまんのや!?」とレクチャーが始まり、「思ってたのと違ったようだ、もうちょっと研究してみるよ」とのたもうた、という一件があった。

こういう次代の最先端を切り開いた人でも萌えキャラを身にまとったこの過激なメタ・ムーブメントの実態は見抜けなかったようである。

ミクさんdisった人たちってその後全部撃破されてるのよね・・・・ミクさんおそるべしw








※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

corruption garden ―その後

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更新滞ってたので回数稼ぎに小ネタをひとつ。

先日紹介したVOCALOID系の動画の『Corruption Garden』ですがフルHD版もあがったようで。


ストリームだとカクつくのでflvで落としてみてもカクつくという―そうか、このレベルになるともうVGAカードの性能が(ry

で、このハイクオリティさにやれ「野生のプロ(定番ですな)」「納品先がまちがってるw」とか言われてましたが、ちゃんとした納品先あったようで(笑)。

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新たにひとつ、宇宙の神様

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ある種の付喪神だな、こりゃ。

のいずさんがtwitterでつぶやいてたので教えてもらった。

まあ時間があって、こういったものに抵抗感のない人は一度見てみてほしい。
(けっこう視聴率高いようなので―回線のすいてる深夜早朝をおすすめする)

有志で協力して宇宙機を空へ送ろう、というプロジェクトの応援動画。
キャラクターが例のあれなので興味がない・抵抗感あるという人も多いと思うが、時間があるならだまされたと思って見てみてほしい。

このMikuMikuDanceというツール(以下MMD)は一人の篤志の開発者の方がこつこつ一人で作って無料で提供してくださっている3Dアニメーション・ツール。本動画もそのMMDを使った動画の定期的に開催されているMMD杯という大会の出品作品なんだが、すごいレベルだよな。

ほんでこのPV、作者の人見覚えがあると思ったらあのMelodyの人だったのね。
(逆にいうと、このMelody3DPV、3:44からの衝撃があったからMMDもあったといえるかもしれない)

以前Doga CGAという阪大の3DCG普及教育プロジェクトを紹介したことがあるが、完全にいまその意志を継いでいるのはこのMMD界隈だろう。本家がいまどうなのかはしらないが、掲げた目的からいうとその目指した花は咲き誇っているだろうと思う。

で、なにが言いたかったかというと、日本人の強さというのはこういうモノや機械に対して思い入れができるところ―平たくいえばアニミズムの強さなんじゃないか、と。

花に会っては花に神を見、石にあっては石に神を見る―。

だからこの動画の最後で「星になったあの子」が見守るように飛んでくる。
日本にはまたひとつ宇宙を旅するモノたちのまもり神が産まれたんだな―と。

そういう意味ではあのときオーストラリアの空を電子の海を通して見上げた人たちはあたらしい神様の誕生に立ちあったのかもしれない。

お地蔵様は子供たちの守り神という。

そして宇宙を旅する”彼”の後輩たちにもいる、あたらしいまもり神が―。

なんとなくそんなことを思わされる動画でした。










※後日追記:自分的には最後に飛んでくるのはアレだと思ってるんだけど、本来の演出上は新しい2号機ということなのかもしれんね。ピギーバック衛星なので当然本体があるという考え方もできるし。
(ただオリジナルとデザイン変わらんので2号機・・・という気はしないんだが)

ただ自分としては魂になったあの子が旅立っていくというふうに解釈しておきます(^^;